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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨4¨-2

「ついさっき速人が図書館行ったけど賢司もどこか行くの?」
「ん、まあな。杏子と行きたいとこがある」

いま、さらりと言ったけど、それってつまり・・・

「もしかしてもう付き合ってるの?」
「お前、だんだん速人に似てきたぞ。服買うんだよ、杏子はセンスいいだろ。無駄な買い物しなくていいから助かるんだ」
「そ・・・そうだね。変なこと言っちゃった、ごめん」
「長くなりそうだから学校には戻れねえと思う。じゃ、またな」


1人残されたホールがやけに広く感じた。
みんな予定があって羨ましい、という思いもあったけど、他の2人がそれぞれペアになったみたいで寂しさの方が強かった。

でも、きっちりした織田さんといい加減な速人
そして決断力のある賢司とマイペースな葉川さん
なんか、互いに引っ張る人がいるいい組合せだと思う。

じゃあ、僕と・・・妹尾さんはどうなんだろう。
僕はみんなで話してる時は聞き役だって織田さんに言われたけど、妹尾さんもそんな感じがする。
聞き役と聞き役、いったいどっちが引っ張るの?

(って、なんでペアになる事を前提で妄想してるんだ)

速人も賢司も夏休みだからちょっと浮かれてるのかもしれない。
女の子の友達と遊びに行きたいって思うのは、それが理由だ。

でも変だな2人とも。
ついさっきは皆で花火やりたいだとか、プールに行きたいだとか言ってたのに。
楽しみにしてたのに自分の事を優先させるなんて変なの。
僕は皆で遊びたいからそう思ってしまうだけかもしれないけれど・・・

暇潰しに携帯のメール受信フォルダを開いて、見返す事にした。
せっかくだし一番最初から見てみよう。
普通の友達からのメールも結構ある。
それでも、やっぱり5人からのメールがフォルダの半数以上を占めていた。

毎日あれだけ話してるのにこんなにメールしてるんだ、と驚いてしまう。
4月の段階では挨拶だけだったり、そんなに文も長くなかったりわりとあっさりしている。
でも、5月の半ばくらいから内容に変化が出てきた。
織田さんは写真を撮るのが好きで、歩いてて何か面白いものを見つけると添付して送信してくる。
変な形の木とか、鳩の行列とか、珍しいものが見られて面白い。
葉川さんのは文章を右から左に向かって読むものや、縦書きのものを送ってくる。
これも普通に読むより頭を使うから面白い。

妹尾さんは・・・2人に比べたら普通だった。
画像もなく、妙に凝った文章でもない、本当に普通のメールだった。
今日のゼミはどうだったとか、あれを食べて美味しかったとか、普段話してる事と変わらない。

でも、一番心が踊るんだ。
彼女が何をして、どんな風に思ったのか、それを知るのが楽しいんだ。
楽しいんだけど・・・なぜかすっきりしない。

(賢司も速人も、自分達の相手と遊んだりしてる。でも僕はただ話してるだけだな)

付き合ってる、と2人は自分から言わないけど、ただの友達とは違うと思う。
羨ましいのか、ちょっと悔しいのか、果たしてどっちなのか分からない。
僕は2人に張り合おうとしてるのだろうか。
妹尾さんと早く友達より進んだ関係になろうとしてるのかなぁ・・・


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