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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨3¨-2

「あんたさ、真面目にゼミを受けてんの」
「睡眠学習って知ってるか弥生、休養しながら知識を増やせる画期的な方法でな」
「ノート見せて」
「はっ、ノート?な、何故見せなきゃならない、お前もちゃんととってるだろ」
「私は、ね。でもあんたはどうなの。ほら早く見せて、とってるなら」

男にはやらねばならない時があるのだ。
仕方なく真っ更なノートを開いて机に置いたら、思い切り頬を叩かれた。

「ちゃんと見せたじゃねえか!なんで叩くんだよ!」
「やっぱり、真っ白。そんなこったろうと思った」
「仕方ないだろ、バイトが忙しいんだぞ。それに帰っても誰もいないから、自分で洗濯とかしないとさぁ・・・寝る時間が無いのよマジで」
「あたしも一人暮らしだよ。それでも出来る限りはやってるの。あんただって出来るはずよ」

自分が出来るから他人も出来る・・・なんなんだその無茶苦茶な理屈は?
どうやら判断の物差しがずいぶん歪んでるらしいな。俺とは違って紛い物なんじゃないのか?

「お前、なんで俺にばっか厳しいのよ。成敏にも賢司にも手は出さないよな?俺はお前のサンドバッグか?!」
「・・・ごめん、急用思い出した。また今度ね」
「連行しといてどこ行くんだよ、おい弥生。弥生っ!」

急にため息を吐いたと思ったらどこか行っちまった。
うう・・・やな気分だ、どうにもすっきりしねえ。
こうなりゃあいつらに相談してみっか。
あまり話したくは無いが、少しでも嫌な気分を吐き出しておきたいからな。
抱え込むよりは楽になれるだろう。何より、うじうじするなんざ俺には似合わねえ。


『もしもしどうしたの速人、え・・・6時?いいけど。場所は・・・分かった、あそこね』

続いて賢司にも電話した。


『なんだ。あ、6時にみかづき?悪いが金無い、こないだ服買ったから。奢りならいいぞ』


普段なら割り勘で押し切るんだが、今回は仕方ない。
1人でも多く、自分以外の意見を聞きたいからな。


約束の時刻になり、俺はラーメン屋¨みかづき¨に足を運んだ。
入ってすぐの窓際のテーブル席、そこが俺達の決まりの場所だ。

「人を呼び出しといて遅れるなんざいい度胸だな、おう」
「珍しいね、速人から声かけるなんて」
「・・・ちょっと、やな事があってな・・・」

どうも梅雨ってのは昔から好きになれない。
ただでさえあまりいい気分ではなかったが、加えて弥生の態度が俺を憂鬱にさせていた。

「何だよ。弥生のことか?」
「ちっ、ちが・・・いやそうだ。違わない、しかしよく分かったな」
「あれだけ毎日怒られりゃあ、脳天気なお前でも流石にへこむだろ」
「俺のハートはガラスで出来てるからなぁ・・・」
「速人も気にするんだね。怒られるの」
「うっ、うるさいな。嬉しそうに言うなっての成敏」
「真面目にゼミを聞かないお前が悪い。弥生はそういうの嫌いなの知ってるよな?」

どうやらこのまま話は俺への説教みたいな感じになりそうだ。
そうなってたまるか。ちゃんと相談しなくちゃならないのに。


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