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ジャングルジム
【ボーイズ 恋愛小説】

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ジャングルジム-3

「低…」

錆びれたブランコは、今座ると低すぎて座り心地が悪い。

「俺さぁ…このブランコから仰向けになって見る空が好きだったなー…」

ゆらゆら揺れながら見る空。
今はもう足が着いてしまうブランコ。
あの時と同じものは、もう見れない。

「俺は鉄棒に足を掛けて見る、ひっくり返った景色が好きだったな。なんかさっ、まるで空の方が地面みたいで。子供の癖に、なんか他のものがさ、ちっぽけに思えたりして。『世界はなんて広いんだぁぁー』って」
「それで、おまえよく鼻血出してたよな。パンツでも見てたか?」
「バーカ。頭に血昇るんだよ。それでも見てるから、たら〜って流れてんだ。いつの間にか」
「バーカ」
「そういやさぁ、京吾よくブランコ取り合ってケンカしてたよな。誰だっけ…ホラ。いっこ上のさ」
「あー…ゴリ男」
「名前覚えてねぇのかよ」
「俺ん中で、あいつは一生ゴリ男だ。ボスゴリみたいな顔してやがって」
今どうしてんだか…懐かしー…。
「でも、途中で居なくなったよな」
「引っ越したんだよ。引っ越す日にさ、俺ん家来て、『あのブランコは、おまえにやる』つってバナナ置いてったな」
「ほお」
「そん時にさ、俺思ったのよ」
「うん」
「ああ、こいつはやっぱりボスゴリだったんだなって」
「…他に思うことはないのかよ」
「子供は正直だからね」

でも、いやな奴ではなかったな。
ムカつく奴だったけど。

ふと見ると、泉はジャングルジムの方に移動していた。ひょいひょいと上に昇っていく。俺は昨日テレビで見た赤ん坊のサルを思い出した。

「……よなっ」
「あ?」

距離があって泉の声が聞こえない。ジャングルジムのふもとへ足を運ぶ。

「京吾いっかいここから落ちたよなっ」
「おまえはびーびー泣いてたな」


てっぺんに登ったとき、足が滑った。
一瞬ふわりと浮いたと思ったら地面にいた。
目を開けたら泉の顔。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの。
痛くて痛くて泣きたいのはこっちなのに、おまえがすんげー泣くから。
何やっても泣かねえおまえが、俺の分まで泣くもんだから、俺はお前を泣かせちゃいけないって思って、必死でおまえを慰めた。
ピースまでして見せた。
痛いのなんかそっち除けで、おまえを守ってやらなきゃとかそんな事思った。
泉の泣き声で人が来て、すぐ病院に連れてかれたっけ。


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