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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-9

「俺は和子ちゃんが好きだからそういうのは無いの」
「え!?」
 虚を突かれた和子は絶句していて、見る見るうちに顔が真っ赤になる。
「それより、どうなんです? 彼女は浮気してるって証拠とかあるんですか?」
 唐突な恋愛劇にも関わらず、弘樹は悠にだけ焦点を向ける。
「いや、それよりって……、というか、別に付き合ってるわけじゃないし、浮気というわけじゃ……」
「まさか、先輩が浮気相手ってわけじゃないっすよね?」
「いや、というか、付き合ってるとかそういうのもわからない……」
「片思いですか? にしては、なんかダメージでかそうだったっす。トイレでの先輩」
 妙な枕言葉に首を傾げたくなるが、彼自身、どうなのか、一度整理したくなる。
「そうだな、俺は彼女と……」

 悠と美琴の関係。
 お向かいさんで幼馴染。
 昔は結婚の約束もしていたけれど、最近は疎遠。
 よくある普通の話。
 それをかき回したのが、大城大学に通う家庭教師のあの男。
 最初は普通に勉強を教えているだけだったし、確認済み。
 しかし、出会った後は、カーテンを閉められ、さらに電気も白熱灯だけというおかしな状況。
 他人の家を覗き見したことは二人に気持ち悪がられたが、恋愛感情ゆえの暴走としてもらった。
 そして、最近始まったメールのやり取り。
 最初に異質さに気付いたのは和子。
 メールである仲間達とやり取りをする彼女は、癖とでもいうべく予測変換をすぐに見抜いた。

「厳密に言うと、浮気じゃないですね……」
「そうだよな……」
 一通り話し終えたあと、悠は視線を下げて手で額を拭うようにする。
「でも、変ですよね……。そういう嫌がらせチックなこと始まったのってぇ、先輩と家庭教師さんが会ったころからですよね? どうしてです? 何か他に隠してることありませんか?」
 恋愛の話から、やや生臭い話へと変遷すると、いつの間にか彼女の声がソプラノの作り声からアルトの声に下がる。
「いや、思いつかないけど……」
「嫌がらせねぇ……」
「うん。私なら、異性の幼馴染ぐらい友情の範囲で許容しますよ」
「だよね。なんか先輩、他にありませんか?」
「えと……」
 メールをもう一度見直す。
 始まったおりのメール。
「そういえば、何かプレゼントしたんですか?」
「ああ、犬のぬいぐるみ……」
「へぇ、やるう!」
「いや、なんか気になって買っただけで、プレゼントするつもりとかじゃないんだ。そのときは頭にきてて、そいつの前で彼女に渡した」
「え?」
「え!?」
「え? なんかまずい?」
 ふざけ半分に聞いていた和子も、弘樹と同じように素の表情で悠を見る。そのリアクションに、悠も何かおかしいことを言ったのかと慌てて聞き返す。
「いや、だって、先輩、その時二人って、ブティックの前で服選んでたんでしょ?」
「ああ」
「それって世間でなんて言うか知ってます?」
「買い物」
「ちょーっぷ!」
 二人がかりでの手刀を脳天に叩き込まれた悠は、別の意味で頭を押さえる。
「「それが原因ですよ! ドアホ先輩!」」
 店内に響く声に、視線が一瞬彼らのほうへ向く。


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