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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-49

**――**

 日記を閉じた悠は、ふぅとため息を吐く。
 彼女が無理に自分を二階に上げた理由が理解できた。
 そして、目的も。
 本当はいますぐに彼女の元へ走りたい。
 けれど、知ってしまった事実に気持ちが混乱していた。
 美琴が牧夫とどういう気持ちで付き合っていたのか、自分をどうみていたのか。
 波のように揺れる彼女の感情と、それを読み取れずにいた浅はかな自分。
 恥ずかしさと後悔、自己満足に浸っていた彼のプライドを、ゆっくりと砕いた。
 美琴の為になにができたのか。
 本当はただ、和子に乗せられ、弘樹に汚れ役を押し付けただけ。
 ただのピエロ。
 そんな自分が、美琴の手を握ることができるのだろうか?
 失恋と罪悪感でうなだれる彼女に言い寄る、卑しい自分。
 もともとそういうことを期待していただけに、それを見透かされた日記の最後に、悠はどうしようもなかった。

「……まだ決まらんの?」

 ドア越しに美琴の声がした。
 彼女の気配に気付かないほど、熱中して読んでいたのだろう。
 ただ、悠はそれほど驚いていなかった。
 騙されるのにはもう慣れっこになったのかもしれない。
「ああ。悪い……すぐ済むから」
「そ」
 美琴をずるいと思う。けれど、それはお互い様。
 悠はドアを開けると、彼女を抱きしめ、そのままベッドに倒れ込む。
「悠……」
「ごめん、遅くなって……」
「うん……」
「俺、ずっと言えなかったけど、お前のこと好きだ」
「知ってる」
「そうか?」
「うん。多分」
「そうだね」
「ウチはどう思ってると思う?」
「好きに決まってるさ」
「自信過剰」
「そうだな。でも、もういいよ。俺達、遠回りしたし、脱線したけど、でも、やっぱり一緒にいたほうがいい」
「そうだね」
「俺、将来は美琴のこと、お嫁さんにするから」
「じゃあ、ウチは悠のところにいってあげる」
「ああ。それまで、がっちり立派な男になる」
「ふふ、こんな中古品でもよろしいですか?」
「俺は美琴が好きなんだ。だから、もう、誰にも渡さない」
「じゃあウチも……」
 長い睫と切れ長の瞳、キスをするとき邪魔になりそうなくらい整った鼻を交差させ、やわらかい時間を過ごす二人。
 舌先がちょんと彼女の唇に触れると、彼女は「だめ」という感じで首を振った。
 悠にとって初めての体験は、彼女主導の幼い、恋慕によるキス。
 それでも良いと思えるのは、誰も彼らの間を邪魔できないから。

 しばらくお互いの感触を楽しんだあと、美琴はごはんの支度を済ませると部屋を出る。
 悠はキスの余韻に浸ってそのままベッドに横になっていた。
 ベッドカバーが乱れて捲れた場所にはふわふわしたものがあった。
 白いはずのそれはいつのまにか薄汚れており、なにか饐えたような臭いがする。
 子供の頃に大切にしていたタオルのような、そんな感じの臭い。
 例の事件からの数日間、彼女を慰めていたのはコイツなのだと、少し嫉妬する。
「ご苦労様……」
 悠はモフ太を美琴の机の上に置くと、これからのことを見られないように、後ろを向かせる。
 今はただ、美琴が彼を呼ぶのを待つばかり。
 腕によりをかけた夕飯は、果たしてなにものぞ?
 それよりも、その後のデザートはきっと……。



過ぎ行く日々、色褪せない想い 完

1492萌える小説書こう企画参加作品


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