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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-10

「いや、だって、ただプレゼントしただけ……」
「あんたさっき自分で言ったでしょ。買い物してる二人を見て腹たったからプレゼント渡したって! それ挑発っすよ」
「でも、彼女だって喜んでくれたし……」
「でもじゃないでえすよ……、でも変ですね? 犬って言いましたよね?」
 やれやれといった様子の和子だが、何かに気付いた様子で悠の携帯を指差す。
「メール読み直してください……」
 悠はメールを見直すと、やがて、鈍い彼も気付く。
 彼女のメールには、プレゼントをもらったことの感謝はあっても、犬や、ぬいぐるみという言葉は無い。
 つまり、それは……。
「くすん、ぬいぐるみに罪は無いのに……」
「嘘……」
 あのとき、既に二人が付き合っていたのなら?
 幼馴染とはいえ、特別な日でないのに突然のプレゼント。お菓子やジュースのような一過性のものでもなく、形として残るもの。それは邪魔物に他ならない。
「電話って、今できます?」
「いや、できるけど……いいのかな……」
「それを確かめるためです……。ついでに試合のことでも報告すればいいじゃないですか」
「そうか、それもそうだな……」
 震える手で操作する。半年近く電話でやり取りをしていないせいか、リダイヤルから探すことはできない。アドレス帳を開いて探したあと、しばらく通話ボタンを押せなかった。
「先輩、怖いんですか?」
「ああ……けど……」
 後輩の叱咤にようやく決心が固まる。

 つ、つ、つ……とぅるるるるる……とぅるるるるる……。

「はい、どっぴおです……」
「うるさい」
 和子をポンと叩く弘樹。渦中の悠は繋がらないことに安堵すべきなのか、それとも不安になるべきなのか複雑な心境。
 一方で、もし付き合っているのなら、それを邪魔することはまかり通るのだろうか?
 むしろ、彼女の恋愛成就を祝うべきなのではないか? 今日の日を勝利で凱旋したことを、きっと彼女が祝うのと同じように……。

 ふっ……。
 繋がった。同時に気持ちが堰をきる。

「もしもし、俺、悠だけど、美琴?」
『あ、うん……えと、何かな? いまちょっと手が離せないの……』
「そう? あのさ、聞いて欲しいんだけど……、俺、今日の大会でさ……」
 疑念を払拭してくれる彼女の声。背後では気取った音楽が聞こえるが、どこかの店内だろうか?
『……あっ……ちょ、ん……だめっ』
「もしもし?」
 上ずった声がした。そして、誰かの存在感。受話器の遠くにいるそれは、ゴボボというノイズに紛れて、舌打ちのような音を出した。
 瞬間、指がすべる。ぴっと高い電子音がした後、悠はゆっくりと話す。
「美琴、今どこにいるの? なぁ……、美琴?」
『……っと、だめよ……は、……でぇ……ね? ……とで……』
「なぁ美琴?」
『ごめん、ちょっと今友達待たせてるから、後でね……』
「おい、美琴……」
『………………』

 通話時間二七秒。
 途切れた会話は、リダイヤルを押しても通じなかった。
「先輩、どうでした?」
「ああ、友達と居るみたいなんだ……」
「そう? ですか? なんか変ですよ?」
「いや、なんかほっとしたら気が抜けて……。悪い、もう帰るは。変なことにつき合わせて悪かったな……」
「先輩?」
「すまん、もういいから……」
 とぼとぼと祝勝会の席に戻る悠に、二人は声を掛けることができなかった……。


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