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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-35

「和子ちゃん、どうする?」
「はい、ここまで来たら、隠せるはずもありません。けど、それはこの男の口から聞きましょう。その方が美琴さんも納得できるでしょうし」
「なに……、なんなの? いったい牧夫、貴方、何をしてたの?」
「ここで話すのもあれだし、移動するか?」
「だめよ、だって牧夫の手当てもしたいい、私の部屋で……」
「それはできません。警察呼ばれかねないし、穏便に済ませるつもりもありませんから」
「こんなにしといて、まだ言うの? あんたおかしいわよ!」
「コイツはそれ以上におかしい奴なんだ!」
 話しにならないとばかりに牧夫を連れて行こうする美琴だが、それを制すように悠が牧夫の肩をしょう。
「悠まで……。もういい、警察呼ぶ」
 再び携帯を取り出そうとする美琴を止めたのは、和子の声。
「美琴さんもこの男とセックスしましたか? おへその右にほくろがありましたよね? ベッドに入る前、やたらと鞄を気にしていませんでしたか? 電動バイブを常にオンにしていたりで、妙な機械音がしてましたよね……」
「……な、なにを、言い出すの?」
 いつもなら細いままの彼女の目が、ぎょっと見開いていた。
「美琴さん。私、去年なんですけど、この人とセックスしました。そして、そのときのことを動画におさえられ、脅迫されました」
 その後、力の抜けた手から携帯がすべり、打ち所が悪かったのか、おかしな方向に曲がると、光が消えた。ちょうど彼女の瞳のように……。

**――**

 のぼり電車はこの時間空いている。しかし、すれ違う電車はどうやってここまで収納したのかというほどの乗車率をみせる。
 人目を避けるため、電車の最後尾に陣取った悠達は、しばらく黙っていた。
 今彼らは、大城大学に向かっている。
 真実を知りたい美琴と、全てを消去させたい和子の折衷案として、いまからあの部室に行くこととなった。
 その際、下手に動かれないためにも牧夫の身柄と携帯電話はしっかりとキープし、ひっきりなしに掛かってくる電話に、先ほど電源を落させた。

「あまり気持ちの良い話ではありませんが、それでも聞きますか?」
 和子の問いかけに、美琴は一瞬迷った後、頷く。
 周囲に身内以外いないことを確認したあと、和子はゆっくりと口を開き、これまでの牧夫との関係を話し始める。
 その告白には、美琴も思い当たる節があるらしく、「ウチも」と何度か相槌を打っていた。
 弘樹は悔しそうにしたあと、またも牧夫を殴ろうとこぶしを振るうが、悠によって止められる。
 もちろん、正義感からではなく、今暴力沙汰を起こしても、牧夫に都合が良いだけだから。


 ぽつぽつと明かりが見えるキャンパスからは、人もまばらに出入りする程度。部室棟も人影が少なく、陸上部と思しき人達が整理体操をしているのが見えた。
 都合の良いことに映像研究サークルの部室には、明かりが消えていた。
 牧夫は希望が費えたとばかりにうなだれ、部室の鍵を開ける。悠は牧夫の身柄を弘樹に任せ、部室に入る。
 電源の落ちているパソコンが三台。ネット回線らしきものは依然ないが、無線LUNによるものかもしれないと、和子は警戒している。
「で、どれをどうするの?」
 機械音痴の美琴はマウス片手に首を捻る。和子はそれを気にせず、一番大きいものを起動させる。
 ヴィーンという起動音の後、ディスプレイが光を放つ。
 しばらく経ってパスワードを求めるログイン画面。弘樹がこぶしを握るのを見て観念したのか、牧夫が告げる。
 トップ画面からあるフォルダを開く。この前来たときに大体は覚えていたらしく、すばやく例のファイルのある場所を見つける。
「弘樹君は見ないで……」
 カーソルがあるファイルを選択したとき、和子はぼそりと呟く。
「わかったよ」
「じゃぁ、俺も出る……」
 弘樹と悠は牧夫を連れて外に出る。


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