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夏の日の帰り道
【青春 恋愛小説】

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夏の日の帰り道-4

 えと、なになに?
 桜井頼子(十六歳・高校生)
 ん?
 目を凝らしても、逆さにしても、遠目から読んでも
 桜井頼子(十六歳・高校生)
 ナヌッ?
 私は大きく目を見開いていたとおもう。ええ、目が乾いて痛くなっても、涙が出そうになっても……。
「ふっふーん! どう? いいでしょ! モデルよ、モデル!」
「大根脚のモデルでしょうか?」
「あのねぇ、買い物にいったらどうしてもって言われてね? それで、本当はいやだったんだけど、しょうがないし、撮らせてあげたのよ」
 私の驚愕を前に暴言はしっかりスルーされたらしく、頼子は勝ち誇った様子でそういいきった。
「なんで……?」
「さぁ? あたしの魅力っていうのかな?」
「おっぱいはたしかに魅力的だけど……」
「ぶっ……」
 隣で珈琲噴出すバカがいるけど気にしない。
「なんとでも言いなさい! とにかく、あたしってばすごくない?」
「うん、すごい」
「でしょでしょ!」
 だってこれを見せるために友達動員したんでしょ? たった一枚の写真のためにさ……。
 いや、正直うらやましいよ。でも、なんか違うっていうか、まぁ、そんなこといっても多分負け惜しみに聞こえるかもしれないけど、でも、なんかちがうような……。
「あたしの勝ちね!」
「え?」
 なんか勝負してたっけ? っていうか、私、そもそも不戦敗なんですけど。
「あっ、ごめん、ちょっと行くね!」
 勝ち誇る彼女は震える携帯を開くと、指をすばやく走らせていた。
 多分、新たな敗北者が来たのだろう。
 でも、うん……、たしかに、これは……、負けた気がする。
 うん、不思議だ……。

*――*

 睫をそろえて髪を整えて。少しでもアホな毛があれば整髪料を噴霧して矯正だ。
 えと、あとは……、
 私は帰るなりオシャレのためのテキストを開き、ファッションの練習をしていた。
 いや、こんなことをしたからといって雑誌モデルになれるわけじゃないし、付け焼刃をしたところで、ボーイッシュ路線の髪型、というか、面倒くさがりの癖毛じゃ可愛い子になれないのはわかっている。
 でも、じっとしていられない。
 だって、なんで頼子が?
「いや、これはアレだろ? イベントかなんかっていうか、買い物に来てた子なら誰でもなれるモデルじゃん」
 何故か居間でせんべいをかじる良太は、先ほどの雑誌、ナントカ・ジュアリー? を開いている。
 ちなみに、私達がもう一度五十鈴書店に買いに行ったとき、頼子はまた別の子に自分のページを見せていたのが笑えた。
 そのあと、なんとなく歯軋りをしたのを覚えている。
「買い物?」
「ああ……、ほら、書いてあるよ。来週の日曜日の午前十時、渋谷のマル十でゲリラ撮影会って……」
 良太から雑誌を奪い取り、ものくろページを熟読すること三分半。
「本当だ」
 確かに書いてある。
「頼子ちゃん、そこ見て行ったんだろ? あれ? バックナンバー無かった? おまえんち」
 鏡に向かって奮闘中の私を置き去りに、彼は勝手に二階へと行く。
「ちょっと、乙女の部屋に勝手に!」
 プライバシーの侵害だと思いつつも、面倒だから好きにさせる。だって良太ごときだもん。
 するとしばらくしてどたどたと階段を下りる音。彼は付録つきの雑誌をいくつかもってくる。
「ほらあった……。ええと、ああ、ほら、駅前デパートに来るって予告あるよ」
「どれどれ?」
 睫を半分だけ整えた私が振り返ると、良太はぷっと吹き出したので、とりあえず鉄拳制裁。


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