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【片思い 恋愛小説】

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春B+3.5-6

「睦月さん」
「…あたし、もう戻る」

そう言ってほとんど手のつけてない弁当に蓋を被せる。

「さっきの話の続きしてもいいですか?」
「急ぐから、また――」
「何で逃げるんですか」
「別に逃げるわけじゃ」
「じゃあ俺の顔見て」
「やだ」
「…、睦月さんは―」

お弁当を完全に包み切らないまま立ち上がるから、慌てて離れて行く手首を掴んだ。

「俺の事が嫌いですか!!」
「…っ」

逃がしたくない。
ちゃんと聞かなきゃ。
あなたは、俺の事が嫌いですか?
それとも―――

「離して」
「返事下さいよ」
「…」
「睦月さん!」
「嫌い!」
「…」
「あんたなんか、嫌い…」

普通なら泣きたくなるくらい悲しい言葉を、俺は笑顔で聞いた。
嫌いと言って泣いてるのは睦月さんの方。
離せと言いながらも手を振り払おうとしないし。

「…ウソつき」

引き寄せて、思っていたよりずっと小さなその身体をキュッと抱き締めた。

「あんたといると、調子狂うから嫌」
「すんません」
「やたらポジティブで、疲れるし」
「そうですね」
「作業着が臭いし」
「現場仕事ですから」
「それに―」
「まだあるんですか」

いいよ。
何を言われても全然大丈夫。

俺の腕の中にすっぽり収まって拒もうとしない睦月さんの返事は、俺にとって明るいものに決まっているのだから。


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