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【片思い 恋愛小説】

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春B+3.5-7

** 春 3.5 **

二人で屋上にいた事がバレないように、昼休みが終わる少し前にあたしから先に屋上を出た。
ニコニコと満面の笑みで手を振る永沢に背中を向けた後、自然に溢れて止まらない笑いを堪えるのに必死だった。

永沢が来てくれた。
あたしのウソを受け止めてくれた。

まだ身体に残る永沢のぬくもりに、恥ずかしさと春のような暖かさを感じて…


「ニタニタし過ぎ」
「…っ」

余韻をぶち壊す嫌な声。
踊り場の影から小松が出てきて、慌てて顔を作ろうとした。
こいつの前では冷めた顔?
それとも業務用だっけ。

「お前でもそんな顔すんのな」
「…いつからいたの」
「永沢がここに来たくらいから」
「まさかあんた…」
「おぅ、一部始終見てた」
「最低!」
「まぁな。ほら、永沢来る前に戻ろうぜ」
「〜…っ」

見られてた。
聞かれてた。
あんな恥ずかしい場面を。
あぁ、あたし小松を嫌いじゃないとか言わなかった?
それも聞かれてたって事?

「あのさぁ、睦月」
「何!」
「んな怒るなよ」
「怒るに決まってんでしょ!覗きなんて――」
「覗きじゃねぇよ、監視」
「あたしが永沢に何かすると思って?」
「そう」

ムッカつく…
やっぱり嫌いだ、こんな奴。
さっき永沢に言った事取り消さなきゃ。

小松より数歩距離をとって、後に付いて行くようにゆっくり階段を降りた。

「睦月」
「何」
「…今週、実家から松田が帰ってくる」
「へー」
「赤ん坊連れてさ」
「それはそれは、おめでとー」
「お前も来るか?」
「…は?」
「だから、遊びに来るかって聞いてんの」
「松田には二度と近付くなって言ってなかったっけ」
「言った」
「どっちだよ」

階段の上段から小松のつむじに向かって問い掛けると急に振り向いて、

「悪かったな!」

怒鳴るような声を出した。
睨み顔であたしを見上げて、気色悪い事にほんのり顔を赤らめている。

「…もしかして、謝ってんの?」
「うるせえな。来るか来ないか松田にメールしとけ!」

一方的に言い残して小松は走って行ってしまった。

何、あいつ。謝るならちゃんと謝ればいいのに。
素直じゃないんだから。

「…ふっ」

つい鼻で笑ってしまったのはそんな小松の様子がおかしかったからなのか、嬉しかったからなのか。
分からないけどあたしの中は満たされた思いでいっぱいだった。


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