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若芽の滴
【鬼畜 官能小説】

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若芽の滴-4

電車は駅に停車し、更に車内の人口密度は増した。
握っていた吊り革が、手から離れそうになりながらも、それでも汐里は手を離さなかった。
……と、握りしめた右手に、誰かが掌を被せ、その細い指ごと吊り革を握ってきた。
車体の揺れに、思わず掴んでしまった……のでは無い……その手は、汐里の指の間に自身の指をこじ入れ、更にギュッと握りしめてきた。
驚いた汐里は顔を上げ、その握ってきた乗客を睨み付けた。


(!!!!)


眼鏡をかけた華奢な中年男性が、横目で汐里の制服姿を、舐めるように眺めていた……そして、何処からか伸びた手が、この前のように尻を撫で始めた。
汐里は勇気を振り絞り、鞄を離した左手で、その手を掴んだ。


「こ、この人痴漢です!!」


言った筈だった……だが、それはまたしても、心の中での叫び声だった……いくら勇気を出しても、いくら痴漢に負けまいと自分を奮い立たせても、実際に遭遇すると、体は恐怖に竦み、口は言葉を失う……先程生まれた小さな勇気は、いとも安易く萎んで消えた。


『桑名…桑名汐里だろ?ククク……』

「!!!!」


いつの間にか耳元に近付いていた男の顔が、上擦った声で汐里の名前を言った……自分を知っている事に、そして、自分が狙われていた事に、汐里は今気付いた……驚きに目は見開き、恐怖に顔は引き攣った。


『やっぱりそうか……前に写真集出したよな?可愛かったよ……』

『柔らかいお尻だねぇ……痴漢されたなんて広まったら、イメージに傷が付くよね?』

『最近、TVで見ないね……人気落ちたのかな?……可哀相にな……』

(な…何よ!?私を……バカにして……)


痴漢は、気弱な女性を狙うという……ラッシュに戸惑う美少女は、それだけで周囲から浮いた存在となり、目に付きやすい……まして、“調べる為”に尻に触れただけで、困ったような泣き顔を浮かべ、一言も発せず逃げ出したのだ……。

しかも、アイドルが性的な被害を受けたなら、イメージダウンは必至であろう。
例えその娘に非が無くてもだ……卑劣極まりない脅迫を用い、夢に向かって歩み始めた少女を、痴漢達は〈試食〉し始めた。


『ヒヒヒ……なんでそんなに動くんだ?目立つだろうが……』

『痴漢されてるってバレてイイのか?ウヘヘ……』

(嫌!嫌ぁ!!触らないでよ!!!)


顔は火を噴くように赤く染まり、恐怖に泳ぐ目からはボロボロと涙が零れ、悲鳴を殺された唇は噛み締められたまま……気が付くと、さっきまで居た女性客は姿を消し、汐里の周りは男性のみ……。


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