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中野望のセイタイ実験
【コメディ 官能小説】

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中野望のセイタイ実験-3

「――最っ低!!」
羞恥と憤りの入り混じった表情で叫ぶのと同時に、彼女は勢いよく卓袱台を叩く。
バキ。
嫌な音がして卓袱台の足が折れた。そしてバランスを崩して前に倒れ込む藍子と、それとは反対に後ろに倒れる祐樹。彼の座っていた位置が、まずかった。
ガシャン。
大きな彼の背が薬品の並んだガラス棚に思い切りぶつかる。
そして、衝撃で揺れたガラス棚の中身が――大爆発を起こした。
ドカン。
轟音と衝撃が三人を襲う。
慌てて玄関を飛び出した彼らはふうと息をつき、恐る恐る部屋の中を覗いた。
散らばった薬品。
黒コゲになった棚。
粉砕されたビーカーに試験管。
そして足の折れた卓袱台――

「のわっ」「うわっ」
僅かにシャツの裾を焦がした祐樹の背を足げにし、髪を乱した藍子の頭を鷲掴み、望は薄っすらと笑みを浮かべて言った。
「――お前達、どうなるか分かっているよな?」
もちろん、彼の額には青筋が浮かんでいた。



「ここでじっとしてりゃいいって、簡単なもんだな」
「んー、何だか裏がありそうな気がするけど……」

――あの後、黒コゲの部屋で土下座する祐樹と藍子に、望は言った。
『ここにあったのは、そこらですぐに買えるような薬品じゃない。いくらすると思ってるんだ』
やれやれといったふうにこめかみを押さえる望に、二人は恐る恐る訊ねる。
『い……いくらするの?』
青くなる祐樹と藍子を見下ろし、望は肩を竦めながら溜息をついた。
『まあ、最低でも100万はもらうことになりそうだな』
『ひゃっ』
ただでさえ青い二人の顔が、更に青ざめた。
『『ひゃくまんっ!?』』
揃って裏返った声を上げる彼らに、望は言う。
『だが、俺も鬼じゃない』
眼鏡を持ち上げ、冷たい瞳をボロボロの薬棚に向けた。
『いつもより危険な薬の実験台になってもらうことで許してやる』
『ほ、本当!?』
『で、でも危険っつーのは……』
『何、危険といっても命にかかわるようなものじゃない』
そう言って笑みを浮かべる望を不審に思いつつ、二人は顔を見合わせる。
(命にかかわらない危険な薬って、どんなものかな?)
(さぁ……でも、100万――二人で折半しても50万だぜ? それ払うよかずっとマシだろ)
『どうする?』
望の声。二人は頷き、再び額を床に付けたのだった。
『『実験台で勘弁してください!』』


カプセルを一錠服用の上、一時間一歩も外に出ることなくこの部屋で待機すること。
そして、その薬の効果が何なのか訊かないこと。
それが望の出した条件だった。
この部屋――第一理科室に閉じ込められた形になった二人は、今さらながらこの実験に訝しがる。
「何か熱いし、変なニオイすんな」
「変なって……別に、いい匂いだと思うけど。お香じゃないの?」
理科室内には妙な甘い匂いが立ち籠められていた。
扉も窓もカーテンも閉め切った部屋は妙に蒸し暑く、今にも熱中症を起こしそうだ。
望は命の危険はないと言っていたが、このコンディションは別の命の危険を招きそうだった。
「ったく、登校日でもねーのに夏休みに学校来るなんて思わなかったぜ」
「あたしも。まあ、授業じゃないからいいけど」
言って、藍子はカーテンを僅かに開いてグラウンドを見渡した。
「今日はどこの部活も練習ないんだ」
野球部やテニス部のかけ声、ホイッスルの音、ボールを蹴る音打つ音の聞こえないグラウンドは思いのほか静かだ。微かな風が木々を揺らす音も、今は窓を閉め切っているため聞こえない。


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