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中野望のセイタイ実験
【コメディ 官能小説】

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中野望のセイタイ実験-2

「……相変わらずヘンな実験してんなぁ」
狭いワンルームに並んだ薬棚と、実験台を見やって祐樹は苦い顔をする。
青い液体の入ったビーカーや干された雑草に目をやり、藍子もぼそりと呟く。
「マッドだよねぇ」
「お前達、宿題は惜しくないのか?」
後ろから声をかけられ、二人はぎくりと肩を強張らせた。
笑顔を繕う彼らに、望は呆れたような表情でノートとプリントの束を投げる。
「全て写すなよ。俺のを写したとバレたら、俺も困るからな。間違った回答も混ぜておけ」
(聞いたー? 自分の回答が全部当たってるって言いたいのよ)
(えっらそーだな、おい)
「何か?」
「「な、何でも!」」
慌てて首を横に振り、祐樹は数学の課題冊子を、藍子は漢文のプリントを手に取った。
そして望から言われるでもなく部屋の中心に置かれた卓袱台にプリントを置いて、祐樹は薬棚側へ藍子はその反対へ腰を下ろす。特に決まっているわけでもないのだが、自然とそこが彼らの席となっていた。
彼らの高校から徒歩10分のこのワンルームアパートにひとりで暮らしている望。両親は、ここから30分ほど離れたマンションに住んでいる。望が家を出たのは、単純に徒歩で学校に通いたいからと、心置きなく実験がしたいという理由であった。
狭いながらもこうして部屋いっぱいに薬品を置いて好きな時間に好きなだけ実験ができる――仕送りが月に5万しか出ないが、それを補って余りある環境だ。
祐樹は計算式を写す手を止め、薬品の並んだ棚を何気なく見つめながら呟いた。
「お前だったらさー、頭よくする薬とか作れねーかなー」
「ぷっ」
その言葉に思わず吹き出した藍子を、祐樹は睨みつけた。
「何だよ」
「そりゃ望はすごいけどさ、そんな薬が作れるなら世の中苦労しないって。本当バカね」
「てっめ、俺をバカにするけどな。そういう藍子こそいっつも数学は俺に負けてるじゃねーか!」
「何よ、この前の期末、数学以外は全教科あたしの方が10点以上も上だったじゃん!」
下らないことで言い争いを始める二人。
毎度のことながら望は辟易する。どちらかというと、宿題を見せるよりも"こちら"の方が彼の懸念していたことだった。
「そーやってすぐ突っかかるのが悪いんだろ! カリカリすんな、カルシウムとれ!」
「何かというと突っかかってくるのはそっちだって同じじゃない! それに、あたしはちゃんと牛乳で毎日カルシウムとってるんだからね!」
狭い卓袱台いっぱいに広げられたプリントや参考書を一瞥し、必要のなさそうなものは床に退かせた後、望はイヤホンと携帯音楽プレーヤーを取り出して科学雑誌を捲った。
「そのくせにいっつもイライラしてんじゃねーか! 牛乳飲んでるって、乳ばっかりデカくなりやがって」
「っ、セクハラ、変態! そういう目で見てるわけ!?」
「お前が見せてんだろ! 更衣室が狭いからって、教室で着替えは止めろっての! 俺はそもそもお前の乳なんかにゃ興味ねーし!」
「あ、あの時はちゃんと教室に張り紙しておいたじゃん! 『着替え中』って!」
「バカか!? んなの貼ってあったら、覗くに決まってんだろが! 期待させやがって!」
「やっぱり変態じゃん! それに、サッカー部の連中がエッチな本回し読みしてるの知ってるんだからね!」
「何が悪いんだよ! お前だって興味ないわけじゃねーだろ!」
既に口論は次第に成績とは関係のないところまで発展していた。
「き、興味なんてない!」
「ほー、そうですかぁ。あ、だからこの前彼氏にフラれたんだっけ、ヤラせてやらねーから」
ニヤニヤと笑いながらの祐樹の言葉に、藍子は顔を真っ赤にした。


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