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中野望のセイタイ実験
【コメディ 官能小説】

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中野望のセイタイ実験-10

「――どうです、面白い"余興"だったでしょう。そして、今回の薬の効果はあの通り完璧だということが分かっていただけた筈です」
「キミ、"余興"の方に力を入れすぎなんじゃない?」
科学系図書やホルマリン漬けの並ぶ理科準備室に似合わない、黒いスーツ姿の女は、そう言う望に苦笑した。
彼女はパイプ椅子の背に凭れ掛り、感心かそれとも呆れかどちらともつかないような溜息を漏らす。
「こうなることを見込んで、卓袱台の足に細工したり薬品棚の中身変えたわけ? すごいわね」
望は目の前に並ぶ三台のモニタを見つめながら肩を竦めた。
「毎年毎年俺の宿題を写しに来ては、その最中に下らないことでいきなり喧嘩し出す――あいつらの行動パターンはもう目に見えている。俺は罠を張っていただけですよ。あいつらがそれに上手く引っかかってくれた。疑いもせず、ね」

「本当、疑いもせずよくやってくれたわねぇ。アタシとしてはありがたいけど」
「まったくだ。俺が、混ざると爆発するような薬品、同じ棚に置いておくと思います? 馬鹿は罠に引っかかったことさえ、気付かない。幸いなことにね」
「今更だけど、キミ、怖いわね」
女は苦い笑いを浮かべたままモニタを見つめた。
絡み合う高校生の姿を見やり、同情するように女は言う。
「あーあ。マイクとスピーカーのスイッチを切っていないどころか、こんなふうに隠し撮りされているなんて知ったら、彼らどんな反応するかしら」
「反応は気になるけれど、言わないつもりですよ」
卒倒した後怒り狂うでしょうね、と淡々と言う望。女は顔を引き攣らせた。
同級生、それも自分の薬でこんな状態になった幼馴染の姿を見るのはどんな気分だろうと女は思う。否、彼だったら本当に何とも思っていないのかも。
友人をモルモットにするなんてどうかしているけれど、薬を依頼する側としては効果が出ていることを証明してくれて、ありがたいといえばありがたいのかしら。
女はそんなことを考えながら、望の横顔をちらりと見やった。
その望の唇が薄く開く。
「それに」
望は高校生にしてはやけに大人びた笑みを浮かべながら満足気に足を組んだ。
「あいつらにとってもいい薬となったでしょう。来年こそは自分達で宿題をなんとかするんじゃないかな。……まあ、それ以上に俺が楽しんでいるのは否定しませんが」
「キミってば、本当に鬼畜ね。うちの幹部が欲しがるわけだわ」
「何とでも言って下さい。俺は自分の楽しみのためなら妥協はしませんよ」
望の言葉に、女はくすりと笑って問うた。
「楽しみって何? 薬の開発? それとも実験……あの子達で遊ぶこと?」
その問いには小首を傾げただけで答えず、望はモニタ越しに祐樹と藍子の姿を見つめながら、再び薄く笑みを浮かべたのだった。


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