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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-42

「待ってください。一緒にいてくれないと、治療ができません」
「治療って、俺はお医者さんじゃないよ」
 お医者さんごっこくらいならできるけど、などと言いそうになる口を思い切り噛む。
「英助君じゃないと治せません。だって、英助君が原因なんですから……」
 そういうと彼女は制服のリボンを解き、手すりにそれをかける。
「白河、いったい、病気って?」
 ブラウスの第二ボタンまで外された頃、英助はようやく疑問を口に出来た。
「分かりませんか?」
 彼女が歩み寄ると、英助も一歩遠ざかる。ドアに背をぶつけるが、今開いたら彼女の半裸姿を外に晒すことになる。それはあまり好ましい状態ではないと判断し、彼は部屋の隅へとあとずさる。
「やっぱり避けるの? 私のこと嫌いですか?」
「いや、嫌いとかじゃなくて……」
「そうですよね。今までさんざん酷いことしてきましたし、嫌われて当然です」
「誤魔化すなよ。白河は仮病なのか? だったら……」
「違います。病気です。重病人です。もうておくれです」
 いくら広いとはいえ個室は個室。由美が二歩も歩けばゆうに追いつかれ、そして手を取られる。
 ひんやりした手に導かれ熱っぽい胸元に触れる。ブラジャーを押しのけ、谷間のやや左よりに触れると、彼女の心臓の音が伝わる。
「ほら、こんなにドキドキしてる。英助君のせいです」
「俺の……せい?」
「いつも誰かさんにいいようにあしらわれてる格好悪い人だと思っていました。でも、本当はすごく優しい人です。私が困ってるときは颯爽と現れて守ってくれる、とても頼もしい人です」
 確かに事実ではあるが、あくまでも偶然の産物であり、記憶の改竄、美化がなされている。
 いわゆる恋に恋するというのだろうか? 周りに比べどこか幼い印象のある彼女ならありえる話。しかし、英助も好きと言われて嫌な気もしない。何せ相手は学年一の美人とされる存在なのだから。
「それは買いかぶりだよ」
 丸くてやや垂れ目気味の癒し系の瞳で見つめられると、滑舌が悪くなる。
「謙遜なさらずに」
 小さいわりにふくらみのある唇は、端っこが上がり基調で、いつも微笑んでいるように見える。
「別に病気じゃないなら、早く学校に」
 初夏を迎えたせいか、肌がじっとりと汗ばみ始める。首筋からつらりと一筋の雫が落ち、手に触れる。
 何故か英助は彼女を見ることが出来なかった。
「私、英助君のこと好きです。あの日から今日までの三九日間、ずっと想ってました」
 約一ヶ月ほど彼女は自分を想っていたという事実に、英助は多少重いものを感じながらも、徐々に思考がずれていく気がした。
「白河の病気って、いわゆる……」
「恋の病です」
 文芸部に所属している彼女らしい、夢身勝ちな答えだが、不思議と自然に聞こえる。
 もしかしたら彼女は自分を物語の登場人物に仕立て上げたのかもしれない。
「どうすれば、治るかな?」
「恋を愛に変えればよいと思います」
 ――続く台詞はなんだろ?
 そう思う頃には、彼も既に次のシーンへと進んでいた。


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