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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-39

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 定期試験も終り、本日の終業式が終われば明日から夏休み。そうなればしばらくは四人と距離を置くことができる。
 使いパシリ自体は苦行といえるほどでもないのだが、クラスメートからの好奇の視線に晒されるのは、『急がず』『焦らず』『目立たない』をモットーにする英助にとってあまり好ましい環境でもなかった。
 比較的清々しい気分にあった英助だが、そんな日に限って乗車率が一二〇%を超える。
 世の企業戦士達にフレックスタイムやオフピーク出勤を奨励したくなる。
 英助はなんともならない現状にそっとため息をつき、例の小説を読み始める。
 主人公は次々に自分を慕ってくれる女の子に鼻の下を伸ばし、メインヒロインに睨まれている。
 自分とは対照的なはずの主人公に、英助はねじれた共感を覚える。
 最近の彼女達との関係は大きく変わっていたからだ。
 千恵は今まで通り昼休みにハニーサンドを要求してくるが、とげとげしさが抜け、どこか甘えているように見える。
 美奈はあくまでも幼馴染としてしか接してくれず、冗談半分でキスをしようとしたら思い切り泣かれた。もちろん嘘泣きなのはわかっていたが、それでも心臓に悪い。
 多香子は一見なにも変わっていないように思えたが、美奈の前ではこれ見よがしに胸を押し付けてくる。二人は根本的に仲が悪いのだろう。
 では由美は?
 最近彼女が変だ。他の三人と親しげに話していると、何故か不機嫌になり、課題の間違いなど、重箱の隅を突くように指摘してくる。
 それに彼女にはいくつか疑問がある。
 何故彼女は彼に痴漢をされたと言い出したのか? 何故痴漢をされたはずの彼女が自分を「英助君」と呼ぶのか?
「ん……、やぁ……」
 かすかに声が聞こえる。最初空耳かと思えたが、最近特に「英助君」と親しげに話しかけられることが多いせいか、しっかりと聞き取れた。
 ――白河だよな、今の声。もしかしてまた?
 普段の由美は背もたれのある出入り口付近にいることが多い。ただ、人の流れが多いわりに死角になりやすい壁際は痴漢をするうえで絶好の場所らしい。千恵も何度か由美に注意したらしいが、混雑の中では移動も出来そうに無い。むしろ痴漢に押し込まれる形で誘導されているのかもしれない。
 由美は多香子と比べればまだ女として未熟だが、痴漢が狙うとしたらおっとりとした彼女の方がやりやすい。今も恥らうばかりで、ろくに抵抗も出来ていないだろう。
「すいません、ちょっと通してください」
 杞憂ならそれでもいい。英助は考えるより先に行動していた。
 肩をぶつけ足を踏まれつつも、ドア脇の手すりを必死で掴み、震える彼女の元へとたどり着く。
「白川さん、おはよう!」
 周囲に聞こえるような声で挨拶すると、彼女の後ろで卑しく蠢いていた男が「ちっ」と舌打ちして英助に背を向ける。
「英助君……」
 ほっとしたような表情な彼女を見るのはこれで二度目。その笑顔を見ると、やはり自分は間違っていないと思えた。


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