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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-14

〜〜

 夕暮れ時になると風が吹き始め、雨が横殴りになる。ワイシャツはすっかり濡れてしまい、肌に張り付き不快感を煽る。
 渡り廊下を歩く英助は、雨風に晒されながら、小刻みに震えつつ千恵の後を追う。
 彼の通う高校には部室棟が二つある。
 文系の部活動は校内にあり、体育会系の部活動は体育館脇にあり、渡り廊下で繋がっている。
 部室の広さは八畳程度で縦に広く、おもに更衣室、ミーティングなどに使われている。
 英助の所属する天文部は部で望遠鏡を所有しており、長期休みには天体観測を行う。そのため文系の部活でも離れの部室棟を宛がわれていた。
 実はもう一つ、文系でありながらも離れの部室を使っている部活がある。
 それは美奈たちの所属する文芸部。
 もともと図書館で活動することの多い部活だが、創立以来積み重ねられてきた原稿の山が部室として利用されていた図書準備室を圧迫し、悲鳴を上げたおばさん史書の提案で新たに部室を与えられたらしい。しかし、最近になって離れに移ることとなり、英助はその引越しに借り出された。
 今も美奈たちは図書館を使っており、部室は実質物置と化していた。
 千恵は部室前で立ち止まると、きょろきょろと周りを伺う。英助は見つからないよう物陰に隠れて息を潜める。
 ガチャリとドアノブを捻る音に続き、千恵の気配が遠ざかる。英助は少し間を置いて、ドアに近づき、聞き耳を立てる。
 室内からは金属音と紙の擦れる音、そして深いため息が聞こえた。
 ――やっぱり何かあったんだ。でも俺がしゃしゃり出られる内容かな? やっぱ安請け合いしたかも。
 慰めるにしても原因が分からない。そもそも、千恵が英助に悩みを相談するのだろうか疑問だ。彼女は彼を痴漢と呼んでいるのだし。
「……はぁ……あたしがどんなに想っても、結局ただのお友達なんだよね……」
 ――想う? お友達? どういう事?
「……なんであんな奴に由美を盗られないといけないのよ……」
 ――由美を盗られるって? まさか……。
 まばらなキーワードをヒントに、英助はある結論に達する。
 千恵は親友である由美に想いを寄せていたのではないか、そして、由美の淡い恋の告白を聞いてショックを受けた。
 いささか突飛な発想と思いつつも、図書室での一件を考えればそれも納得できる。千恵の様子がおかしくなったのは、由美の理想の彼氏像とその存在が判明した後なのだから。
 人が人を好きになることは幸せな偶然。さもなくば不幸な勘違い。
 美奈がよく嘯いている恋愛論の一説を思い出すが、この場合はどちらだろう。
 好きになった相手が同性で、しかも片思いの最中では、高確率で切ない結末を迎えざるを得ない。こんな時にいったいどんな言葉をかければよいのか、英助は思案に暮れる。
「……ん……、ふぅ……あ、い、だめ……」
 突然部室の中からしゅしゅという衣擦れの音と、切なげに掠れた声が聞こえた。
 英助は思考を中断して、ドアに耳を付ける。
「……やだ、もうこんなことしちゃだめなのにぃ……でも、これを最後にするから、いいでしょ? 由美……」
 かすかだがピチャピチャという水音も聞こえる。
 気になった英助は静かにドアノブを回すと、ゆっくりと扉を開く。二センチ程度の隙間から中の様子を伺う。
 角度のせいでロッカーしか見えないが、備え付けの鏡に反射して、千恵の姿が見えた。
 彼女は入り口に背を向け体育座りをしており、たまに「ふぅ」、「あっ」という声を漏らしながら小刻みに震えていた。
 ――何やってんだ? 気分でも悪いのかな?
 ノックをするべきかと迷うが、何故ここにいるのかを聞かれると困るので、しばし覗きを継続する。ゆっくりとドアを押し、室内の半分が見渡せるようになる。


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