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フェイスズフェターズ
【ファンタジー 官能小説】

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フェイスズフェターズ 一話「欲望の都市」1-16

「そろそろ、お嬢様のアソコを洗いますよ。んふ、綺麗なピンク色ですね……」


 実際にはしていないが、舌なめずりをするような表情の女が、まさにクレバスを撫でようとしたとき、ついにリタは快感を押し切った。


「ち、違う。私はここにこういうことをしに来たのではない! 薬を買いに来たのだ!」


 ぴたり、と女達の動きが止まった。



8



 リタが店に入ってもう何分になるだろうか。個人浴場の向かい、背の高い何かの店の壁に背中を預けながら、ニコラはじっとリタの帰りを待っていた。先ほどから何度も男達から誘いを受けているが、それを全て断っている。娼婦の格好をしていると、この場所に溶け込むことは容易であるが、人を待つのには不便のようだ。

 あの娘は、ここが娼館だと知らずに入っていったようだが、大丈夫だろうか。最後に耳打ちしたとおり、本来の目的でなくここにはあくまでも『薬』を買いに来たのだと言えば、面倒事にはならないはずだ。そう考えていても、年下の可愛い『妹』をこんなところに送り出すのはとてつもなく不安になる。体を抱くように組んだ腕に自然と力が籠もっていることに気づくと、ニコラは思わず苦笑してしまう。


(まるで自分の初聖務のときのようね)


 十年前のことを思い出すと、ニコラもリタと同じように、世間知らずで向こう見ずだった。やはり若かったのだろう。そのときのニコラは『薬』の存在を知らなかった。レコンキスタが完了してすぐのころで、まだ薬が教皇庁に知られていない時期だったのだ。

 『薬』というのは、帝国から入ってきた麻薬の一種だ。もともとは西になかった麻薬だったのだが、帝国の侵略で西側の一部に伝わったのだ。製法は不明、幻覚症状や依存性が強いことは西に出回っている麻薬と同様だが、決定的に違うのは、非常に強い媚薬としての効果があるということだ。そのため、今目の前にあるような個人浴場で、主に金持ちに向けて密かに売買されている。それを使って『する』と、天国を見られるというのだ。

 そして、製法が不明ということは非常に手に入りにくいのだ。方法の一つとして帝国から輸入するというものがあるが、当然帝国と取引するなど西の人間にとって最大のタブーであるし、教皇庁も帝国との国境線には常に目を光らせている。密輸は簡単なことではない。では、どうやって薬を手に入れているのか? 答えは簡単で、『西側に潜んでいる魔族が西側で密かに生産している』ということだ。この薬は西に潜伏する魔族勢力にとって大きな収入源なのだ。だからこそ、ニコラたちにとっては魔族の尻尾を掴むのに非常に役に立つ。薬を販売している人間を見つけたのなら、その人間が魔族勢力に与する人間であるか、その人間に薬を売った人間が魔族に与する人間なのだ。

 ニコラは聖務を執行するためにカラジュスに来ている。もしリタの入った店が薬を取り扱っているのならば、その店の人間を『問いただして』薬の出所を吐かせるのだ。多少の犠牲はやむを得ない、ニコラとて暴力が好きなわけではないが、西の平和のためには血を流す必要がある。

 ニコラが物思いにふけっていると、彼女の目の前を一人の女が通った。白人の女であり、ニコラのように露出を極限まで控えた服装はしていない。


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