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フェイスズフェターズ
【ファンタジー 官能小説】

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フェイスズフェターズ 一話「欲望の都市」1-17

(あれは……修道女?)


 一瞬だけだったが、間違いない。ニコラが今『補充されて』所属している教会のシスターだ。昼間の挨拶のときにちらりとしか見ていないが、印象的な黒髪で彼女だとわかる。だがしかし、疑問が残る。教会関係者が残酷に殺されているような状況で、治安の悪いここ東部になぜ修道女がいるのだろうか? 彼女が尼僧服ではなく単なるローブを身に纏っているのは、恐らくその対策であるかもしれない。しかし、だからと言って安心できるわけではない。

 ニコラは遠ざかる彼女を、十分な距離を取って追いかける。リタのことが頭をよぎったが、あの修道女の方を優先する。もう犠牲者は出したくなかったからだ。



9



 聖職者は、妻帯してはならない。その逆も然りだ。当然、姦淫も許されない。--それを破っている自分は、地獄に堕ちるのだろうか。夜闇の中を早足に進みながら、修道女、ケイトは考えた。

 だが、仕方ないことではないか? 十代の頃に両親を亡くし、修道院に入ってからというもの、ずっと厳しい制約の中で生きてきたのだ。しかも、故郷の教会ならともかく、こんな異郷の地の教会に派遣されたら、間違いの一つも犯したくなる。東部に住んでいる男のところに、夜な夜な通っては腰を振っているのも、そうした不満のせいなのだ。昼間は神に仕え、夜は男の下半身に仕えている。世間ではきっとそんな女の子とを『売女』と呼ぶのだろう。


(そうよ。仕方ないのよ。そう……)


 心に湧く罪悪感を必死に誤魔化す。そう、他の人間だってそうだ。今時、生涯童貞・処女で通す聖職者の方が珍しいのではないか? 敬虔な人間は多くない、いや、敬虔な人間でも、そうしたことをするのは当然のはずだ。

 セックス。その毒に溺れてしまっているケイトは、こうして聖職者が何人も殺されているような状況でも、毎夜欠かさず男の元へ通っている。何かの歌で『行きはよいよい、帰りは怖い』というのがあった。今はまさにその状態だ。疼く体を我慢しながら男の元へ行くときは恐怖など微塵も感じないが、事を終えて帰るときはこうしてがくがくと震えている。

 聖職者の連続殺人、それが今カラジュスでどんな反応を受けているか。それは現地に住むケイトはよくわかっていた。大抵の人間は、忌々しい異教の僧侶が死んでいくことを歓迎しているのだ。カラジュスという国は、魔族の支配から解放された後は教皇庁の支配下に入っただけである。ただ支配者が変わっただけなのだ。活発に人間が行き交う都市の隅っこに、見慣れない建造物が建てられ、その頂点に十字架が掲げられていることは、カラジュスの人間にとって屈辱的なことだった。

 ランプの頼りない明かりを掲げながら、ケイトは教会へと急ぐ。そうして、教会への道を半分ほど進んだときだ。丁度道の左側に森があったのだが、その森から一つの影がケイトの前に躍り出てきたのだ。悲鳴を上げることすらできぬまま、ケイトは自分よりも頭一つほど大きい影を見つめる。男だ。シャツにズボン、そして褐色の肌をしている。現地の人間だろう。その男が、まったく無表情でこちらを見下ろしているのだ。体に一瞬で冷や汗が湧き上がり、ケイトは咄嗟に体を翻して反対側に走り出そうとして、失敗した。彼女が反転したときに、二人目の男が彼女の前に躍り出たのだ。そしてそれを境に次々と男が森から出現し、ケイトは七人の男に周りを囲まれてしまった。


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