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SFな彼女
【SF 官能小説】

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SFな彼女 -Sweet Face編--10

4. ハッピー・サーズデー?

「ちょっと、待って」
俺が鞄の中に手を突っ込んで家の鍵を探る傍らで、榊が言った。
俺が首を傾げると、榊は困ったような表情を浮かべる。
「ユズリハ……さんが、いるかもしれないでしょ」
「ああ……」
俺は頷きながら考えた。
確かに、さっきは"ソレ"目的で家に誘っちまったけど、ユズリハが帰ってきている可能性もあるんだ。
「いたらいたで会って行けばいいよ」
「ん……」
そういえば、榊にとってユズリハの存在はどんな位置にあるんだろう。
戸惑っているところを見ると、会いたくないのかもしれない。
考えてみれば、ユズリハの手であんなことやこんなことをされたのだから、それももっともだといえる。
「会いたくない?」
単刀直入に訊くと、榊は慌てて首と手のひらを横に振った。
「そ、そういうわけじゃなくて」
榊は言いながら顔を俯かせた。
「私がいて、いいと思う?」
戸惑うように俺に問う榊。
「会いたくないっていうか、どんな顔して会えばいいか分からないのよ。その……あんなところ、見られたし……」
尻すぼみになって行く言葉に俺は苦笑を浮かべた。
「大丈夫だって」
榊を安心させるためではなく、俺は言う。
「むしろ、もろ手を上げて喜ぶと思うけどな」


「あ、おかえりなさぁい!」
ドアを開けると、ぱたぱたとユズリハが駆けてきた。
俺の家に住み着いてからはずっと普通の格好をしていたユズリハだったが、今は来た時と同じ、あの近未来的なコスチューム姿だ。
その姿に驚く榊に、ユズリハは気付いたようだった。
「ああッ、カエデさまぁー!!」
「ユ、ユズリハさん」
ユズリハの声が一オクターブ、高くなったような気がした。
「ユズリハでいいですってばぁ、カエデさま♪」
俺の傍らをすり抜け、榊に抱きつくユズリハ。
多少予想していたとはいえ、ちょっと複雑なんですけど、俺。
(あのことがあってから、ユズリハ、カエデさんカエデさんばっかりだもんな)
四六時中榊のことを考えてしまっていたのは、そんなユズリハも原因のひとつだったのかもしれない。

さて榊とユズリハを横目に、俺は家に上がって散らばった雑誌やらゴミやらを隅にやった。
それから冷蔵庫を開け、缶ビールを三本取り出して机に置く。
「いつまで抱き合ってんだ」
玄関のふたりに苦笑交じりに声をかけ、俺はベッドに腰を下ろした。
榊は腕にユズリハをくっつけてやってくる。
しかしユズリハはたと何かに気付いて立ち止まり、おろおろと辺りを見回した。
「?」
「マ、マサキさま。ユズリハ、うっかりこの格好でカエデさまをお迎えしてしまいました」
言って自分のコスチュームを摘み上げるユズリハ。
俺は榊にユズリハの正体を明かし、ユズリハの能力も知っているということを説明してやった。
すると安堵に胸を撫で下ろし、ユズリハは再び榊に抱きつく。
榊にべったりのユズリハに、俺は苦笑した。
「そんなにそいつが好きか?」
「はい♪ すべすべでつるつるで、気持ちよくて可愛いんですぅ♪」
後半の言葉が、あの時のことを指しているのかは分からないが、俺は苦笑を浮かべたままでふたりにビールをすすめる。
ユズリハはいつもと同じようににこにこと笑いながら缶を手に取り、それを呷った。
何だか、妙に明るい。妙に元気だ。


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