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SFな彼女
【SF 官能小説】

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SFな彼女 -Science Fiction編--1

君は……本当に宇宙人ってヤツなのか?


SFな彼女 -Science Fiction編-


1. ブラック・サーズデー

「おい、エリカ! ちょ、切るなって……!」
ブツッ……ツー……ツー……ツー……
俺の制止など完全にシカトして、彼女は電話を切った。
孤独な電子音が耳に響き、俺は苛立ちを抑えられずに舌打ちをする。
「クソッ」
「ご愁傷様」
俺の背後から、そんな冷めた声。
俺は顔を顰めて、横を通り過ぎる女を見やった。
肩辺りで切り揃えた黒い髪と銀フレームの眼鏡がひどく冷たい印象を抱かせる。
「人の会話を盗み聞きしてんじゃねえよ」
「聞こえるように言う方が悪いのよ」
口元を歪めながら俺は言うが、こいつは俺を見ずにそう言い放つ。
威圧するような黒のパンツスーツは塾講のバイトがあるかららしい。
おまけにまったくといっていいほど化粧っけがないから、この女には色気というものがない。
せめてスカートを履いて足くらい見せりゃいいのにと思う。
「ゼミ、始まるわよ」
俺の舌打ちにも一切動じることなく言って、女――榊楓(サカキカエデ)はちらりと俺を見る。
俺は憮然として携帯を閉じ、がりがりと頭を掻いて教室に入る榊の後を追った。

まったく、毎週木曜日は俺――梅本正樹(ウメモトマサキ)にとっちゃブラック・サーズデーとでも言うべき日だった。
大して講義も入っていないのに、ゼミがあるからわざわざ大学に来なきゃならない。
それだけでもう気分が滅入るってのに、毎週何かしら嫌なことがあるときた。
たとえば、先々週はこの榊に俺が課題をやっていないのを教授にチクられたし、先週は彼女からの別れ話。
そして今週はついにサヨナラ、ときた。
(仕方ねえか……サークルにも全然顔出してねえし。しっかし……)
何が悲しいって、悔しいって、あいつと最後にエッチしたのが先週の月曜日だってことだ。
(結構いい身体してたのになァ……)
以来金のない俺は自家発電に勤しむしかなく――何ていうか、本当、情けない。こんなことを真っ先に考えちゃう辺り。
いや、分かっちゃいるんだ。俺の自堕落さがそもそもの原因だってのは。
だけど、こうも木曜日にそれが重なるっていうと、何かが憑いているような気がしてならない。
(俺としちゃ、こいつが疫病神だと思うんだけどな)
そう思いながら、榊を睨み付ける。
この女、ちょっと成績がいいからって俺に勉強を押しつけてきやがる。
何でも学年単位で成績の底上げしないとゼミの意味がないとか。
文学部のゼミなんざ、そんなにガツガツ勉強や研究しなくたって単位くらいとれるだろうに。
とにかく、何かと絡んできやがるんだ。そんなに俺のことが憎いのか。
「何よ」
俺の視線に気付いた榊が、キツイ物言いで俺に問う。
これがまた、俺は苦手で仕方ない。
「べ、別に」
慌ててただ一言だけ言って、俺は机の上の資料を手に取った。
あーあ、ツイてねえ。だから嫌なんだ、木曜日は!
三限の終わりまで残り約八十分。
俺はほとんど内容の理解できない、マラルメに関しての資料に目を通しながら、この八十分をどう乗り切るか、それだけを考えていた。


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