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SFな彼女
【SF 官能小説】

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SFな彼女 -Sweet Face編--11

(……お別れが迫ってるってのに)
それとも、別れが迫っているから無理矢理に明るいユズリハを演じているというのだろうか。
俺はちらりと榊を見やる。
榊もまたビールを開けているところであった。
俺はなかなか別れのことが切り出せず、缶をもてあそんでいた。
「そういえば、マサキさま」
ユズリハが声をかけ、俺ははっとして顔を上げた。
「時計の側のメモ、見てくれましたぁ?」

どきりと胸が鳴る。
俺は小さく頷いた。
ユズリハは相変わらず笑顔で、傍らの榊に腕を絡ませながら言う。
「というわけなんですぅ!」
その顔は心底嬉しそうで。
俺は複雑な心境だった。
(そんなにこの家が嫌だったのか……?)
榊もまた戸惑ったふうに俺とユズリハを交互に見やる。
「ユズリハ」
俺は口を開いた。
「はい?」
「何が嫌だったのか分からない。でも、俺はユズリハに感謝したいことがたくさんあるんだ。飯は作ってくれるし、肩が凝った時はマッサージしてくれるし、夜は……ってあわわ」
一瞬だけ鋭くなった榊の視線を感じ、俺は慌てて口を噤んだ。
「と、ともかく」
俺はふう、と息をつく。それから真っ直ぐなユズリハの瞳を見つめて言った。
「君に会えてよかったって思ってるよ」
「マサキさま……」
「ありがとう」
言って、ちらりと榊と視線を合わせた。
何となく気恥ずかしくなって、俺は頭を掻く。
すると、ユズリハが訝しげに首を傾げた。
「マサキさまぁ」
苦笑を浮かべ、ユズリハは言う。
「あの、そんな最後みたいなこと、言わないで下さいよぉ」
「「へ?」」
ユズリハの言葉に、俺と榊の声が重なる。
「マサキさま、ちゃあんとメモ読みましたかぁ?」
少しだけむっとした様子でユズリハが言い、俺は慌ててあのクシャクシャになったメモを探す。
そしてそのメモを探している途中、俺は置き時計の裏にメモパッドを見つけた。
「!?」
俺は思わず目を瞬かせ、ユズリハを見やる。

「……『滞在期限が迫りました』」
そのメモに書かれた内容を読み上げる。
「『ですが 手続きを経て もう少しこちらにいられることになりました
 2日ほど パスの更新と実家への連絡で 外に出ます』」
そこまで読み、息をつく。
そして、少し行間を空けた後にはこう書いてあった。
「『カエデさまに よろしくお伝え下さい
 また3人で ××しましょう』……」
そこまで読み上げ――俺は榊を見やった。
顔を赤く染め、俯く榊にユズリハは言う。
「あれぇ、そのつもりで来てくれたんじゃないんですか?」
そんなユズリハの言葉に、耳まで真っ赤になる榊。
俺はメモを片手に困惑しながらユズリハに言った。
「これ……ってことは、あのクシャクシャになった方のメモは!?」
「クシャクシャ?」
「あの、お別れ云々ってやつ!」
ああ、とユズリハは相槌を打った。
にっこりと笑み、彼女は人差し指を立てて言う。
「滞在期限が迫っちゃったので、書置きしたんです。でも、パスセンターでお話したら延泊してもいいと許可を頂いたので」
「それで、一旦帰ってきて書置きを書きなおしたんです。初めに書いた方は丸めて捨てたと思ったのですが……」
そんなユズリハの話に、俺は思わず脱力した。


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