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ルーツ
【女性向け 官能小説】

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ルーツU-4

徹と田所と私の三人で静かなラウンジで飲んだ。
徹を真ん中に挟んで、ほとんど田所は会話に入らない。
初対面の挨拶と、なんでもない世間話のあと
寡黙なはずの徹がほぼ一方的に話し続ける。
田所は立会人のようだ。
話の内容は、徹の今までの恋愛。
過去の女性たちとの経緯を延々と話す。
恋愛経験のない私はドラマのような徹の遍歴に感動であったり
憧れのようなものであったり興味深く聞き入った。
徹に関心があったからこそ、彼のことを知りたいと思って
聞いていたのかもしれない。
それにしても衝撃的てもあった。
交際どころか、会うのも二度目である。
そんな話を聞かせてどうするつもりだったのだろうか。
当時は遠い大人の世界を背伸びして付いていくだけの
私には理解できないことだった。
いや、今となっても理解できていない。

嫉妬?疑惑?
大人の世界が、彼の世界が現実離れしているようで
嫉妬することさえ、私にはまだ許される範囲にいたっていない気がした。

大人な彼にあこがれた私の恋愛は、現実離れのままだったのかも
知れない。
言葉少ない彼の視線だけで胸が熱くなった。
危険な通りをかばうように抱き寄せられて歩く時も
静かなバーでいつものロックを私にもロックを飲ませて
肩に腕をまわすだけの時間も
待ち合わせで待つのはいつも私、大勢の待ち合わせ
組みの片方がいる中で、彼の来る彼女、彼女の来る彼
一組去り一組の片方が増える中
彼が現れて、私と合流すると光が放つような気分になった。
私たちが二人になると周りの空気さえも威圧する。
最上級なビッグカップルだと自負してしまう。
すれ違う人たちが目を釘付けに、そして振り返りたくなる。

そんな彼との時間はシンデレラタイムだった。

彼は本当に落ち着いて見えて、焦りがなかった。
ギラギラしたところがなくて、ガツガツしていないように見えた。
そんな彼も当然健全な男であり、私の前で甘えたそぶりを
することもあった。

恋愛ごっこをファーストステージからじっくり楽しむように
彼は少しずつ 少しずつ 私に近づいた。
それは私が大胆奔放に見えて、実のところウブであるのを
見抜いたがゆえに楽しむように。

私たちのデートは、彼の生活習慣にそったものだった。
彼は野球チームに入っていたので試合の後会うことも多かった。
彼がシャワーを浴びるために、私たちはホテルに行った。
しかし、まさに彼がシャワーを浴びると、部屋に戻ってきた時には
完全に服装を整えていて、バスタオルやバスローブで
私の前に現れることはしばらくなかった。
「こういうところは そういうことをするだけに来るわけじゃない」と
彼はそういった。

電車に乗ると、彼はいつも私をドアの端に寄せて
自分が覆うように私の前にはだかった。守られているようで
それも心地よかった。
長身の彼にガードされつつ、彼が話しかけるときには
わざと耳元に近づいて話してくる。
はた目には照れくさいけれど、それもまた心地よかった。
交際し始めた頃、彼は会うたびにそのように耳元で
「今度 僕のファーストOOをあげる」とおどけて言った。
冗談にはしゃいでいるのか、私の反応をからかっているのか
そういう時の彼は子供っぽく見えた。


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