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ルーツ
【女性向け 官能小説】

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ルーツU-5

初めてのキスも、唇に触れるだけで私を観察しているようだった。
舌を入れられたとき、無意識に身をずらせてしまった。
正直、私としても大人のキスが初めてではなかったのだけど
そういう新鮮な反応が彼と私とのルールのような気がした。

私たちが結ばれるまで、どれくらいかかったのだろう。
彼はじっくりと己をじらしていたのだろうか、わたしはどうだったのか。
私は恐さもあった。好きだったから、やっぱり好きな人とは
不安があった。
大胆にも初めてお泊りした日、両親は田舎に行ってて
私一人留守番のはずだった。
彼に誘われて、母にうその電話をかけた。
女の子の友達のところに泊まるって。

ベッドに横になった私はまるでまな板の上の鯉のように
手も足もまっすぐのばしたまま天井を見ていた。
料理人の彼はゆっくりと身を横にして、私の髪を撫ぜる。
しずかにゆっくりと輪郭をなぞり、首筋 鎖骨 肩・・・。
そっと口づけをする。重ねるだけのキス。
さっき彼の指がなぞったルートを、唇がなぞっていく。
胸のふくらみを優しく包み、またそのまま惜しみつつも流れていく彼の指。

その手が私の下腹を撫ぜて、ショーツの淵へ届くと
彼の流れがピタッと止まる。
その手は逆流して腰へ胸へ鎖骨へ・・・
そしてまた、スタート地点からすべるように流れていく。
ただし・・ショーツのラインではピタリと止まり、引き返す。

私はもう息苦しくて、何度も繰り返される緊張に
疲れてしまっていた。
何度目だろうか、また彼がそこでピタリと止まった数秒後
大きく息を吐き出した。
私と同時に・・である。

気づかなかった。私は無意識に彼の指の動きに緊張して
その場所に近づくと息をこらしていたのだ。
大きく吸ってとめる。鼓動だけが激しく打ち続ける。
そんな覚悟の瞬間のような私を彼は面白がっていたのだろう。
何も気づかずに、彼の手が遠のくと安堵して吸い込んだ息を
大きく吐き出していたのは私だったようだ。
それを彼は真似たらしい。
そのことにようやく気づいて、二人で目を合わせて噴出した。
緊張が一気に笑い声になってしまった。

その日は彼は私を抱こうとしなかった。
リボンを解いて包装紙を楽しみながら開けて
あとはそのまま またのお楽しみにしたのである。
私としてもそれが自然だった。
抱かれたいなどと思うほどの悦びをしらないウブだったのだ。
それもまた、とても幸せな事だった。

シンデレラタイムにも終わりが来た。
初めての相思相愛、恋愛の感想は 不安な夢ごこち
別れがずっと恐かった。
あまりに恐くて、自分から求めたくなった。
だけど そう仕向けたのは彼だと気づいている。
別れを言い出さされたのだ。

結婚という言葉も出ていた。確約ではないけど
年齢的に私の親が心配した。反対ではなかった。
だけど彼は確約から逃れたかったのだと思う。
私を待たせるのは忍びないと。
自分はまだ、結婚する意志はないと。


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