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ルーツ
【女性向け 官能小説】

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ルーツU-3

(はぁ?)心の中で、頭の中で私の理解力、読解力がフル回転する。
ドーユーイミ?
経験乏しい幼い私も女力は素質として備わっていたのだろう。
ぱちくりと目を見開いて徹をみつめて「うん」とだけうなづいた。
要するに、タバコを吸う私を見たくなかったってことでしょ?
ただ単純に女がタバコを吸うのがキライで気に入らなかったのだろう
と、そのときは深く考えなかった。何よりもはやく踊りに行きたかった。
反省ととったのか、私のうなづきと媚びる瞳に満足して
徹はそう言っただけだった。

我が家の門限は厳しくて、大胆奔放に見える私も
誰よりも早い時間にお開きを言い出さなくてはならなかった。
パーキングに車を置いたまま電車で出てきた私たちは
地下鉄の改札で解散することになった。
時間に焦る私に柳井が突然言った。
「僕とつきあってもらえないかな」
聞きたくなかった。聞きたくない台詞。
また遊ぼうね、なら即座にOKと答えて帰れたのに、返事に困る。
答えは極めて簡単NOだけど、どのように伝えればいいのかが問題。
あぁ、何でそんなこというかなぁー、ましてや今のタイミングで。
私は実のところ、偉そうで恐そうな徹に惹かれていた。
8つ年上なのも魅力だった。寡黙なのも堂々とした自信も
偉そうに言われる言葉すらも心地よく大人の雰囲気に魅せられていた。
なのに・・・である。
私は急ぎながら「ごめんなさい」といって逃げるように
自分の乗り場に走った。

(まただ・・・)心の中でがっかりした。
好きでもない人に好かれて・・・。と暗い気持ちで切符を
買っていると
「二枚ね」と後ろで声がした。
追いかけてきたのは徹だった。
「・・・どうして?」
「だって・・ちょっと普通じゃなかったから・・送るよ」
「柳井くんは?」
「おぅ、向こうの駅前で待っとけって言ってある」
「待つ?」
「・・・ん。俺が話をしてきてやるからって言った」
何それ・・余計なことを・・・言葉にはできないまま
門限に急ぐので徹が付いてこようが構わずに電車に乗った。

「今度、野球見にいこうか?」
ポツリと徹が言った。柳井のために取り持つつもりかと
気が乗らない気分で
「柳井くんたちも?」と聞いた。
「うん・・一緒でもいいし、いやなら二人でもいい」と徹は言った。
「一緒はやだ。 二人なら・・・いい」徹はどう言うつもりで
私を追いかけ、私を誘ったのか。
最悪の先輩ではないか。
だけど、その時の私にはそれすら魅力に感じた。
ぬけがけ、よこどり、どれも甘美な言葉に感じたに違いない。
私たちはほんの数駅の間に無言の交渉が成立し、
互いの呼び方などをはしゃいで決めていた。

徹は変わっているのかもしれない。それなりの思惑があっての
行動かもしれない。初対面で病院へのお見舞い。
そして二人での初めてのデートでは
徹の親友だという田所を紹介された。


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