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遠い春
【フェチ/マニア 官能小説】

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遠い春-3

これで叩かれるとお尻全体が痛くなる。靴べらと違って柄が短いので、一発叩かれたと思ったらすぐに次の一発が飛んでくる。私が素直じゃないと、先生は左手で私の腰を抱え込んでこのラケットでこれでもかと私のお尻を連打した。でも服を脱がされることはなかった。私はいつもホットパンツの上からお尻を叩かれていた。
ホットパンツはお尻の形がはっきりわかって恥ずかしいけど、このお尻を叩いてくださいという気持ちで私は潔く先生の前に突き出した。スカートはまくれるのを心配して先生が叩きにくそうにしていたことがあり、それ以来先生の前では二度とはかなかった。もともと活発な私はホットパンツ派だったけど。何かの拍子に先生の手が太股に触れることもドキドキの要素になった。札幌では真冬でも10代の子はタイトで短いデニムや黒レザーのホットパンツ、ロングブーツで股だけを露出している子は多かった。「M子ちゃんはその格好が似合うなあ。真冬でも元気だね」「はい、先生!」。私が即座にハキハキと答えると、先生は私の肩をそっと抱きしめてくれた。
 
 年が明けると、受験はもう目の前に迫っていた。私は狙いをS医科大に定めた。「M子は英語や国語はバッチリなんだから、数学で解ける問題だけを確実に解け」。それが先生のアドバイスだった。実際箸にも棒にもかからなかった数学が、先生の熱い指導のおかげで得点源になることもあった。でも試験が迫ると、私は徐々に情緒不安定になった。そもそも仮面浪人すること自体が私の自信のなさの表れだった。先生は本番を目前にして弱さを見せる私を優しく包み、同時に厳しく活を入れた。先生に会った翌日には決まって、座るとお尻が痛くなった。
 私の不安は的中した。英語や国語は総合でも期待以上の点が取れていた。が、数学は、センター試験での失敗をひきずってしまった。受かる自信もなかったが、それ以上に先生に申し訳がなかった。F大のほうは友達のバックアップで落第だけは避けられた。もうこの受験自体、なかったことにしてしまいたいと思った。
私は無性に先生に会いたくなった。

「先生、ダメです。失敗しました」「まだ結果も出てないじゃないか」「数学、メロメロです」。先生はしばらく黙っていた。やがて、「そうか、じゃあM子にキツイお仕置きをしないとな」。
静かだが強くそう言い放った。私はハッとして先生の顔を見た。目には怒りの火があった。先生のこの反応は私には少し意外だった。
きっと慰めてくれるという甘い期待が心の片隅にあったと思う。その直後、戸惑う私の右腕を先生は掴むと強くひっぱった。エッ?何をされるの? びっくりして言葉が出ない。私はベッドの上にうつぶせに寝かされた。「さあお仕置きだ! そのままじっとしてろよ」。先生は自分のズボンから革のベルトを抜いた。それから私のデニムのホットパンツのお尻めがけて、そのベルトを強く振り下ろし始めた。バシッ! バシッ! 幅広のベルトがお尻の肉の厚いところに食い込んだ。「先生、痛い!」、甘える余裕などなく、ほんとうに痛かった。「わかってる」バシッ! バシッ! お仕置きは十数発続いた。そして私は泣いた。動きの止まった先生の方を見る
と、先生は背中を向けていた。私には先生も泣いているのがわかった。泣き止んだ私に、先生は優しく言った。「M子、大丈夫だ、きっと受かってるよ。まだ結果も出ないうちから、M子の悪いとこだ。俺たちの半年間の努力は何だったんだよ」「でも先生」。私は反論しようとしてやめた。「そうだね、先生」。そう言うと 私は先生の胸に飛び込んだ。

 幸運にも私は合格した。その年の個別試験が例年以上に難しかったことに救われた形だった。あのお仕置きの日以来、私は先生とは電話で話しただけで会っていなかった。会うのはちょっとバツが悪かったが、やっぱり会いたい。中島公園を過ぎると真駒内行きの地下鉄はガラガラになる。私は去年の夏からのことを思い出していた。模擬試験でひどい点をとって、机にしがみついたままお尻を突き出し、竹の靴べらが折れそうなほど叩かれながら立っていた10月の夜。正月明けで勉強に身が入らず、反抗し、先生の膝の上で暴れながら、卓球のラケットでお尻を叩かれ続けた1月の日曜日。あの濃密な時間は、二度と戻ってはこない。


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