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遠い春
【フェチ/マニア 官能小説】

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遠い春-2

 ある秋の日だった。私は友人に誘われ、めったに飲まないお酒を飲んだ。そして深酒をしてしまった。翌日曜は午前中先生の家で授業がある日だった。私は二日酔いのまま遅刻した。先生は肩を竦めただけで何も言わなかった。私は妙に安心して、先生の話を聞きながら転た寝してしまった。ドンと机を叩く音がした。「寝息までたてて寝るか! ひっぱたくぞ」。先生に怒鳴られたのは初めてだった。目が覚めたばかりの私に子供時代の記憶が一瞬蘇った。私は動転したまま反射的に立ち上がるとくるりと先生に背を向けた。「先生、これでいいですか?」。それはどう見ても、お尻を叩いてくださいという意思表示だった。「いや、もういい。反省したなら」。
先生は明らかに戸惑っていた。私はそのままの姿勢で立っていた。
「いいんです」。このままでは引っ込みがつかない、思い切り罰してくれたほうがいっそのこと楽だと思った。先生は黙っていた。私の気持ちを推し量っていてくれたのだろう。そして立ち上がった。
パシッ! お尻の鈍い音がした。自分のお尻の音を聞くのは変な感じだった。先生の手が当たったお尻の下の方が少し痛かった。私はなおもそのまま立っていた。いまのはちょっと失敗で、先生にまだ私を叩く気が残っているのを感じたから。ピシャッ! 今度は前よりずっと強く派手な音とともに、先生の手の平が私のホットパンツ
のお尻の真ん中を捕らえた。「痛っ」と思わずつぶやいてお尻に手の甲を当てた。温かかった。先生に背を向け、お尻はまだ少し突き出したままの恥ずかしい格好だった。先生は「もう座れ」と優しく言った。「はい」。私はようやく椅子にお尻を下ろした。椅子が冷たく感じた。私はこれでよかったと思ったし、先生もすっきりした表情に見えた。これが私の初めてのお仕置き体験だった。

 この事件を境目にして、先生と私の関係は明らかに変質した。私は先生をよく困らせるようになった。遅刻もしたし、宿題も忘れた。悪いことをしても、すぐに言い訳したり口答えしたり。先生がとうとう怒り出すまで。先生も遠慮なく私を叱るようになった。この子には、アメだけでなくムチが必要だと理解したのかもしれない。お説教止まりのこともあったが、平手打ちのお仕置きを受けることもあった。もちろん罰を決めるのは先生だ。私はいつもデニムとか黒のホットパンツをはいていたが、机に両手をついてそのお尻をより深く突き出していた。「M子はほんと、男の子みたいだな。悪戯小僧め。いくぞ。ハーッ」、ピシャッ! 「痛ぇ!」。わざと男の子っぽい受け答えでリアクションすると、私は顔をしかめてお尻をさすったりした。
 お仕置きのある受験生活は、スリリングで楽しかった。私はいつしか所期の目的よりも、その生活自体を楽しんでいた。先生もそういう部分があったように思う。でも先生には先生の立場があった。
ご家族のためにも、この子をなんとか合格させないと。そんな心の葛藤のようなものを見せることがあった。「いまのままじゃヤバイぞ。M子、どうした? 俺じゃ甘えてだめなのか?」。「先生、ごめんなさい。M子のことを、もっと厳しく罰してくれていいんです。幼くて、ほんとごめんなさい」。先生は困ったような顔をする。私は先生の困った顔が好きだった。それを見てちょっと楽しんだり、私はほんとうに悪い子だった。というか、先生からのお仕置きを受けるたびに、子供時代に逆行していくような感覚があった。
 
 ほどなくお仕置きには道具が使われるようになった。お尻を平手打ちされても、私はもう前ほど痛がる素振りを見せなくなっていた。気持ち的にもお互いお仕置きに慣れてきてしまった。これではもう効き目がない、先生はときどき部屋の中を見回すことがあった。初めて使われたのは竹製の靴べらだった。すぐ目の届く玄関にあったからだ。初体験はかなり緊張した。私は机に両手をついたまま目をつぶった。道具を使われることには痛みへの恐怖だけでなく、ある種の屈辱感を覚えた。少し突き放されたような淋しいような悔しさとともに、私は痛みを受け止めた。先生は自らの手を痛めることなく、私に今までの数倍のお尻への痛みとバシッという部屋中に響く大きなお仕置きの音を与えた。それでもまだ効き目が足りない! 次は素振り用の卓球ラケット。これは普通のラケットよりずっと重い。お尻にズシンと響いて鈍い痛みが染み込んでいく感じで、初めて叩かれた時には驚いた。大きさは私の小さなお尻が隠れるくらいあり、それを手にとって構えられるだけで恥ずかしかった。


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