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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-21

「来たな」
「あんた達、ローゼンロット海賊団ね!」
「おや、知ってるんだねぇ。ようやくあたし達も名前が売れてきたってことかい?」
ローゼンロットの主格らしいボブの女が、そう言いながらエイジ達三人に近づく。
思わず身構えたエイジだったが、近づくにつれてはっきりしてくる女の顔に驚いたような表情を浮かべた。
「! お前は……酒場の!」
「そうさ、坊や。昨日はありがとうよ」
ハスキーな声でエイジに言ったのは、酒場で情報屋と名乗った女であった。
女は軍帽のつばをくいと上げ、妖艶な笑みを口元に浮かべる。

「ぷ。エイジが坊や、ですって」
ぼそり、とダナが傍らのジャムに耳打ちすると、ジャムも思わずその言葉に吹き出した。
もっとも、どう見ても二十歳を超えたエイジと女の言葉に疑問を持ったのは彼らだけではなかったようだ。
「彼、坊やって歳じゃないですぅ」
「だから姉貴はオバンとかトシマだとか言われんだよ。まだ二十五だろ?」
「二十四だ、馬鹿者!」
ボブの女が噛みついて言うと、その言葉にダナとジャムがこそこそと小さな声で言った。
「あの女、二十四ですってよ、ジャム」
「どう見たって三十間近よね」
その会話が聞こえたらしく、女は額に青筋を浮かべながら二人を睨み付けた。
ローゼンロットの残りの二人が、やれやれといった様子で肩を竦めた。
癖っ毛の女はエイジと同じかそれ以下、三つ編みの女はもっと幼い印象を受けた。
「お前達、余計なことは言うんじゃないよ!」
ボブの女は二人に一喝し、再びエイジの方に向き直って口元を歪める。
「ともかく、お前達が『若返りの水』を求めてるって情報は、お前がくれたのさ。感謝するよ」
「情報屋の振りして、誰が『若返りの水』を探してんのか探ってたんだな。ローゼンロットは赤色人だってきいていたから、うっかりしてたぜ」
「誰がそんなことを言い出した? 単なる噂だろう。信じたお前が悪いのさ」
くくく、と女は喉の奥で低く笑った後、後ろの二人と共に高らかな笑い声を上げた。

「ローゼンロット海賊団の正体は、赤色人とヒューマンの混血――バーミリオン三姉妹なのさ!」
「三女、ルビィ・バーミリオン!」
「次女、スカーレット・バーミリオン!」
「そしてこのあたしが長女、レッド・バーミリオン!」
力の篭った拳を高らかに掲げ、バーミリオン三姉妹は声を上げる。
唖然とするエイジ達を置いてきぼりにしながら。
「赤薔薇に宿る闘争は!」
癖っ毛の女――スカーレットが、三つ編みのルビィを指差しながら言うと、彼女は右手を掲げた。
「我らが美がため!」
「『若返りの水』はこのローゼンロット海賊団が頂くよ!」
最後にレッドが笑いながら言い、更に拳に力を込める。
エイジ達は未だ唖然と、口を開けてローゼンロットの口上を聞いていた。
「おや」
一仕事した、といった様子でレッドが額の汗を拭う。
そしてふと彼女はジャムに目を向けると、真っ赤なルージュを歪ませながら言った。
「久しぶりじゃないか。どこに逃げたと思ったらこんなところで再会とはね」
ブーツのヒールを響かせながら、レッドはジャムへと歩み寄る。
そして彼女の目の前で止まると、警戒するジャムに向かって挑発するように顎を上げて言った。
「え? チュール・コンフィ・ド・マーマレイド?」
「「!!」」
その言葉に、エイジとダナが驚いたようにレッドを見た。
「……あたしの名前を知ってたっていうの」
「はッ、あの時は気付かなかったけどね! さっきお前達が人狼と話しているのを聞いたのさ!」
レッドは言い、ちらりと後ろの二人――スカーレットとルビィを見やる。
彼女達は頷き、どこからか自らの得物を取り出した。
スカーレットはバラ鞭、ルビィは鎖と、これもまたかつてヴァイマルで使われていたようなレトロな武器である。


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