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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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ジャム・ジャム・ジャム-1

時はコズミック暦5505年。
大小の宇宙船が行き交い、様々な人種や文化が入り乱れる銀河系宇宙――ギャラクティカ。
宇宙海賊やトレジャーハンター達は財宝を求め、今日も星海を駆ける。


ジャム・ジャム・ジャム


第1章 ジャムはいかが?

この銀河系宇宙ギャラクティカで最大級の大きさを誇る惑星、その名もギャラクティカ。
雑多で混沌とした街の雰囲気はどこか人を惹き付けるのか。
その中心都市ギャラクティカシティは、様々な人種や文化で溢れていた。

ギャラクティカシティ東部に位置する軽食堂『ジョナ・ダイニング』。
太陽系人の口に良く合う上に安価と評判の店である。
時は昼時。今日もイーストサイドで働く労働者達が集まり、談笑しながら食事をとっていた。
「『……で数十人が重軽傷を負う傷害事件が発生。コズミック・ポリスは自称トレジャーハンターのヤーバッカ・オーロウ容疑者を拘束しました。
さて、続いては行方不明となってもうじき一ヶ月となります、銀河の歌姫が……ブツ』」
辛気臭いニュースを流すラジオを止め、トカゲ頭の店主はBGMを流すべくディスクをオーディオにセットする。
明るいポップスが流れるがしかし、此処にやってくる連中はそんなことなどに気付きもしないだろう。
まるで年頃の娘のように、彼らは自分達のお喋りに夢中だ。
だから店の中で起こるトラブルも、自分が関わっていない限り口出しはしないし耳さえ傾けない。

「そうだな……キスかデート一回か、どっちがいい?」
そんなジョナ・ダイニングの片隅で、にやけた面が若いウエイトレスを困らせていた。
彼女を困らせているのは、年の頃なら二十歳くらい、逆立った黒髪と黒瞳、そして日に焼けた肌の青年。
その頭にはアルミ製のコーヒーマグが逆さまになって載っていた。
ブラックのコーヒーを頭から滴らせ、男はウエイトレスに詰め寄る。
「俺としてはデートの方を推すんだけど、どう?」
「お、お客様、困ります!」
「困るっつってもなぁ……俺の頭にコーヒーひっかけといて、タダで済まそうなんて思っちゃいねえだろ?」
つまり、こういうことらしい。
男がウエイトレスにコーヒーを頼んだところ、彼女は注いできたマグカップをうっかり男の頭の上に落としてしまった、と。
コーヒーがさほど熱くなかったのが、せめてもの幸いか。
「いいじゃねえか、減るもんじゃなし。君が付き合ってくれりゃ、こんな失敗チャラにしてやるって」
ぐいと男はウエイトレスの腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「ちょっと、何してンのよ」
男の背後で、そんな声がした。
もしも誰かがこの会話を聞いていたとしたら、彼は違和感を感じたことだろう。
違和感は、おそらくその口調と声質とのギャップ。

「ダナ」
男が振り返ると、そこには100万G級賞金首の海賊と言われてもおかしくないような、凶悪な面構えに浅黒い肌をした巨躯が立っていた。
先程の声は紛れもなくこの厳つい男のものだった。
ダナ、と呼ばれた男は呆れたように溜息をつく。
「エイジったら、見境なく女の子にモーションかけるのやめてちょうだい」
黒髪の男――エイジにそう言ってウエイトレスの腕から彼の手を離させる。
それからダナは懐からハンカチを取り出すと、エイジに手渡した。


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