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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-20

第6章 赤薔薇に宿る闘争は!

人狼達と別れてから、一時間は経っただろうか。
「『汝 赤き雫を杯に捧げよ』……」
ダナがぼそりと呟く。
彼の視線の先には、古びた石版。そこに彼の呟いた言葉が彫られていた。
「捧げたら『若返りの水』が出てくるのかもな」
エイジがそう言って辺りを見渡す。
遺跡に入ってから、ずっと狭い通路が続いていた。
数々の罠を潜り抜け、彼らがようやく辿り着いた先は、随分とひらけた場所。
一体どのような用途として使われていたのだろうか、祭壇も火の跡もない真四角の部屋である。
ただ石版とその近くに杯がひっそりと設えてあるだけだ。
相も変わらず天井は高く、真っ暗な闇が頭上に広がっている。
しかし通路とは違い、幾らか明るい空間であった。薄暗いが、灯りなしでも歩けるくらいだ。
ジャムはそっと杯に触れ、神妙な面持ちで口を開いた。
「何だか、変な感じ」
「変な?」
エイジが彼女と同じように首を傾げた。
「お前、この遺跡に入ってから何だかおかしいぜ。何があるっていうんだ?」
「ジャムが違和感を覚えているとしたら、それって例の海賊団のせいじゃないかしら?」
ダナが言い、頬に手を当てて考えるような仕草を見せる。
「もっとも奴らが出てくるとしたら、アタシ達がお宝を手に入れてからなンでしょうけど」
「だな。姑息な手を使うってのが婦警さんからの話だからな」
「うん……」
彼らの言葉に、しかしジャムは未だ何か引っかかるように曖昧な返事をした。
そんなジャムの様子に、エイジが一瞬躊躇い――そして思い切ったように彼女の背を叩いて言った。
「平気だって。何かおかしなのが出てきても、俺達が……」
照れ臭そうに彼女からは視線を逸らし、エイジは言う。
「ま、守ってやるって」
エイジの言葉に思わずといったように吹き出したのはダナだった。
「ちょ、ダナ! てめえ何笑ってんだよ!」
「だ、だってB級映画みたいな台詞が嫌いなあんたが、女の子に"守ってやる"って言うなんてェ」
くすくすと笑うダナと、ばつが悪そうに頭を掻くエイジ。
ジャムもそんな二人を見てくすりと笑うと、エイジの脇腹を小突いて笑った。
「ありがと。期待してる」
「お、おう」
この薄暗い中でなかったなら、エイジの真っ赤に照れた顔を見ることができただろう。
そんなことを考えて笑いながら、ダナは再び石版の文字を見やった。
「さァて。これ、解いてみる?」
ダナが二人に問うと、エイジが少しばかり苦い顔を見せた。
「解くっつってもなぁ」
苦笑しながら顎をしゃくり、エイジは言う。
「……遺跡に赤き雫って言ったらやっぱり」
「血だろうねぇ」
彼ら三人の後ろから聞こえた、ハスキーな美声。
エイジの言葉はそんな何者かの言葉に掻き消される。

「「「!!」」」
三人が一斉に声のする方を振り向いた。
そこにいたのは、三人の女。
深く被った軍帽によって顔はよく見えないが、ひとりは癖のついた長い髪を後ろに払いのけ、ひとりは編み込んだ髪をもてあそんでいた。
そしてもうひとり、先程のハスキーな声の持ち主は、耳にかかるボブをかき上げる。
彼女達のいずれもが、惑星ヴァイマルの軍人が着ているようなカーキ色の軍服に身を包み、そのカーキに映える真っ赤な髪を持っていた。


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