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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつてジュンかく語りき-1

村井純子、20歳。昨夜から、滝田学と男女コーサイを始めた。
うら若き乙女の頃は、プラトニックなまま結婚するンだ!とか宣言していたが、早速ハダカのお付き合いを済ませたばかりである。
今日は平日ではあるが、大学の授業は無い。なので、お天道サマが真上に来るまで惰眠した。
「ふわあぁ……。ヨク寝たぁ。」
枕元の携帯を見る。メール一件。
『Titleジュンへ。
おはようございます。美味しい親子丼のお店を見つけたので、昼ご飯を一緒しませんか。』
タキタからだ。自然と頬が緩むのを感じる。ほにゃほにゃほにゃ…。布団になだれ込む。
幸せな気持ちのまま、まどろみの中へ。
「って、違ぁう!準備しなくては。」
ぴょん!と飛び起きる。顔を洗い、長い黒髪に櫛を入れた。全くと言っていい程、癖のつかない髪が、緊急時には役に立つ。
あ、ご飯食べに行くンだったな。長い髪をくるくるくるっと巻き上げ、お気に入りのかんざしを挿した。
うん、おっけ。いつものジーンズに片足を突っ込んだところで、思いとどまる。
「……でぇと、か。」
観音開きのクローゼット、御開帳〜。高校生時代の友人にあつらえてもらった若草色のワンピースを引っ張り出す。
なんだかこっぱずかしいケド、……でぇとだし。いいよね。タキタ、笑わナイよね?
ぽちぽちぽち…。タキタにメールを送る。
『Title準備完了!
返事遅れてスマン。こちら準備完了!連絡待つ。』
我ながらイロケの無いメールだなぁと思いつつ、送信。だって、コレが私なんだから仕方ない。
玄関で何を履いていこうかと思案していたら、携帯が鳴いた。
『Title了解。
これから迎えに行きます。待ってて。』
茶色のブーツに足を差し入れ、待ちきれずに部屋を飛び出した。タキタの家の方角に向かって歩き出す。秋の風が肌にさらりと心地良い。
しばらく歩いていくと、前方に見覚えのあるぽやぽや猫っ毛が見えた。
タキタだ。
「おーい!」
彼に声を掛け、右手をぶんぶか振りながら駆けて行く。
「……ジュン?」
目の前に来て、やっと彼は私が私だと認識したようだ。
「オマエ、今までワカラなかったのかぁ?」
がっくりと肩を落とす。オマエの眼鏡はガラス瓶かっ!!
「だって、そんな可愛い格好してるんですもん。わかりませんよ。」
へ?
「カワイイ?」
ぴょこと上目でタキタを見る。
「ええ。」
目を細めて笑う。これはホントの笑顔だ。
「……ありが、と。」
「いいえ。」
二人で肩を並べて歩く。思えば、こうやって歩くのは初めてだ。前回、私は気を失ってしまっていたから、おそらくタキタの背中におぶされていたのだろう。
そう思うと、なんだか照れくさく、背中がムズ痒いような感覚におそわれた。横目にタキタを見ると、彼もそうらしく少し頬が赤くなっている。
「へへへへへ…。」
「何ですか?」
にへらと笑い、右手の甲でタキタの手をちょんとこづいた。タキタは前を向いたママ、私の右手を優しくふわりと包み込んだ。少し冷えた私の指先が、タキタの体温をしなやかに受け取る。
とても、とても気持ちがヨイ。
感触を存分に堪能してから、私は彼に尋ねた。
「そういや、ウマい親子丼の店とは、いずこにあるのだ?」
親子丼から始まる、食全般のグルメ情報調査には努力を惜しまぬ私だ。この周辺で未知の店など皆無だとジフしておったのだが。
「どこだと思いますか?」
ムムム。質問に質問で答えるとは、卑怯なり。タキタ!
「ワカラないから、聞いてるンじゃないか。」
眉を吊り上げてタキタに抗議する。彼はにこにこ笑ってばかりで、マッタク答える気がない。
っと。そういえば、駅周辺はマダ調査していなかったな。
「さては、……駅マエか?」
「違います。」
「んぬぬ。……駅ウラだな?」
「違います。」
「分かった!駅ナカだっ!」
「どこですか、それは。」
私たちの住んでいる街はイナカに類するところで、駅ビルなんてトカイ的なものは存在しない。駅には、電車に乗るためのホームがあるだけだ。
私は繋いでいた手を離して「降参、降参。」と両手をひらひらさせた。タキタはそんな私を見ると、また目を細めて笑い、私の右手を捕まえた。
とくん、と胸が鳴る。彼はこちらには顔を向けずに答えを口にした。
「僕ん家です。」
なにぃ!
「オマエ、ズッコいぞっ!お店って言ったじゃないか。」
タキタはころころ笑うだけだ。全く…、ヨクわかんないヤツ!


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