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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?6〜危機感認識の避妊知識・その1〜-1

タイル張りの床を打つ水音が響く。

「……ふぅ」
立ち込める湯煙に紛れて、澄んだ声が織り成す溜め息が一つ。一日の疲れの象徴と言えよう。
世間一般のそれに比べ大きな湯舟で、思うままに四肢を伸ばした溜め息の出所――玲が、雑把にまとめた髪から髪留めを抜く。そして浴槽のふちで肘を立てると、頬杖をついた。
「今日も一日お疲れ様、って所かしら。そっちはどう?」
返答を求める微笑と視線の先には、泡まみれの髪を丹念に洗い流す誠司。彼は問われた事に気付いたが、とりあえず洗髪を優先してすぐには答えない。それでもなるべく待たせないように急ぎ、乱暴に髪を洗い流した。
「同じような感じですね。こっちはこっちで疲れました」
「そう」
誠司の答えを聞き、玲はすっと目を細める。そして、抜いた髪留めを鏡の前に置く。その拍子に白く濁った水面上で、魅惑的な色香を放つ果実が揺れた。
「……洗い終わった?」
「あ、はい」
「じゃあ交代。誠司君はお風呂の中ね?」
玲の腰が上がる。ざば、という音を立て、彼女の見事な裸身が露わになった。
見る者に『女』を自覚させる要素を充分過ぎる程に備えた、男ならば飛びつかずにはいられない扇情的な肢体。世の女性が一度は憧れるであろう艶めいた美を、玲は隠すどころか見せつけるように晒す。それには彼も、さすがに目のやり場に困ってしまう。
いくら散々抱いたとはいえ、やはり普段目にすることのない女性の体。どこに目をやるか戸惑ってしまうし、油断するとその色香に当てられて何をしでかすかわからない。
「あの、玲さん。隠してくれないのは流石に勘弁してください」
だから、誠司は生唾を飲み込みつつ懇願する。しかし、あからさまに困っている彼に対し、玲はからかうような笑みを浮かべるばかり。
「ふふ……そろそろ飽きてもいいくらい見て味わってるくせに、こういう時はうぶなの?」
「……悪いですか?」
「ううん」
不意に接吻。頬に柔らかい唇の感触を残し、彼女は目を細める。
「そういう所も好きよ。大事にしてくれてるんだなぁ、って感じられるもの」
「……そういうものですか?」
だが誠司が首を傾げると、細めた目は丸くなった。
「……ぷっ」
そして吹き出す。明らかに笑っている様子に、誠司は眉間に皺を寄せた。
「笑われる理由がわかりません」
「ふふ……ごめんなさいね。でも、気付いてないんだなぁ、って思ったら急におかしくなって、ね」
「それって、俺が鈍いって事ですか?」
ややむくれ顔。対する玲は誠司を浴槽に追いやった上で、泡立てたスポンジを手に取りながら微笑。そして、「悪い意味で言ってるわけじゃないわ」と呟いた。
「変に鋭いと、妙な事でギスギスする気がするの。それって、精神衛生上良くないでしょ?だから私、少し鈍いくらいがいいかな、って思うのよ」
「……それには同意します」
誠司の口から、嘆息を含んだ言葉が漏れる。
「でも自分の事を鈍いって言われると、流石に凹みますよ」
しかし表情は苦笑。機嫌はある程度直ったようだ。
「ふふ……」
今度は穏やかに、玲は笑う。泡立ちの具合をを見てスポンジを肌の上に滑らせながら、目を誠司の方に向けた。
「そうだ。今日は何が食べたい?」
「え……食べたい物、ですか?」
やや不自然な話題転換。誠司は急に聞かれた事に戸惑いつつも、自然と思考を傾けてしまう。
「……急にそんな事聞かれても、すぐには思いつきませんよ
そして、結果である迷走は言葉となって漏れ出た。それでも誠司は、泡のドレスを纏う玲にぼんやりとした眼差しを向けながら思案する。
しかし、既に渦巻いている頭ではなかなか出てこない。しばらく考えたが、これでは仕方ないと彼は判断し、代わりにその理由を挙げる事にした。


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