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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?〜鬱屈飲酒と意外情事〜-1

「……課長め」
僅かに残っていた酒を呷り、空になったグラスごと拳を台に叩きつける。
「仕事なんかほとんど回さないくせに、役立たずとかこきおろして」
焦点の合わない目で、彼はカウンターの向こう側に立つ、恰幅のいい店主に向かって、その場にいない上司への文句をぶちぶちと呟く。
「挙げ句の果てには、『お前は部署のお荷物だ』だとか言って……っ。こっちは真面目に仕事と向き合ってるってのに、お構いなしで……っ!」
再び、手に持ったグラスを叩きつける。その様子を見かねたのか、そこに来て店主が、同情を伴った目で彼を見た。
「倉本さん……話なら幾らでも聞いてあげますから、グラスを叩きつけないでくだせぇ。割れて、手ぇ怪我しちまいますよ」
嗄れた声で、しかしやんわりと、酒に酔う彼を諭す。その言葉に、倉本と呼ばれた彼ははっとなり、くぐもった声で「すいません。ちょっと、血が昇ったみたいです」と呟きながら、グラスを手離した。

彼は倉本 誠司(くらもと せいじ)。大手企業『KIRISAWAカンパニー』に勤め始めて二年になる社員だ。
頼まれたら基本的に嫌とは言わない性格で、同僚達からは人気がある。仕事への姿勢は非常に真摯で、任された仕事は必ずこなす有能な人物……のはずだが、「間違いははっきりと言うべき」という信条が災いしてか上司に疎まれている、少々世渡り下手な人物である。

「それだけ騒ぐって事は、余程辛いんでしょうな」
「わかりますか……?」
鼻声で聞き返す誠司に、店主は柔和な笑みを浮かべる。
「かれこれ二年の付き合いでさぁ。わからん方が失礼でしょう。……ささ、嫌な事は、酒と一緒に流してしまいましょうや」
どこからか取り出した酒瓶を誠司の前に出すと、手早く蓋を開ける。その音に、誠司ははっとなった。酒で赤らんだ顔に申し訳なさそうな色をたたえ、店主が自分のグラスに酒を注ごうとするのを慌てて止める。
「い、いいですよっ。もう四杯目ですしっ」
しかし店主は、さっとグラスに酒を注ぐと、そっと目の前に差し出した。
「気にせんでもええです。貴方はここの常連さんですし、貴方が酒を飲む事なんて、そんなにないんですから……そん時の酒ぐらい、奢らせてくだせぇ」
すっかり馴染みになった暖かい笑み。誠司はそれをぼんやりと見つめてから、目の前に差し出されたグラスに目を落とす。
なみなみと注がれた透明な液体。先程動かした時に生じた揺れが、ガラスの壁に当たっては波打つ。しばし、それを見ていた誠司であったが。
「…じゃあ、四杯目、頂きます」
両手でしっかと掴み上げると、感謝の意を込めて頭を下げた。

――これで、二年前から合わせて何本の酒を、この人に奢ってもらっているのだろう。

そう、思いながら。
軽く、一口。
「……ふぅ」
ほっと一息をつく。三杯目と違い、何故か心が落ち着いてくる。
改めて感謝の意を実感したからだろうか――ぼんやりとした頭の中で、ふと思う。

――がらっ。

不意に響き渡る、店の引き戸を開ける音。気分の落ち着いてきた誠司の体が、出し抜けに強ばった。同時に彼の視線は、酒瓶をしまおうとしていた店主よりも先に扉へと向く事になった。

そこにいたのは、背中にかかる長さの髪を下ろした、眉目秀麗な女性。

整った端正な顔立ち。軽くつり上がった目が少々きつい印象を与えるものの、同時に美しい印象も与える。そして、身を包む女性用のビジネススーツは彼女の豊満な肢体を強調し、その美しさと、いかにもキャリアウーマンといった具合のスマートさを引き立てる。
さながら「仕事中が絵になる美女」――誠司の中にふと、そんな感想が浮かんだ。


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