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1・2・3
【初恋 恋愛小説】

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3・2・1-5

四、
俺の頭からあの時の…リコ達の…リコの笑顔が消えない…
月曜の朝が来た。
だけど俺はあの時から時間が止まったようで、リコがあの男に向ける笑顔が消えない、消えないどころかリアルになっていく。
その日は朝から雨で、改札を出てリコの姿を見つけたけどとても直視出来ずに少し離れたところで傘を開いた。
「翔、助かったー」
そう言って俺が開いた傘に飛び込んできたのは佐伯だった。
「もう、最悪〜電車ん中に傘忘れてさ〜ごめん、学校まで入れてって!!」
……
「ばーか」
「なによーそんな言い方ないでしょ」
「だいたいお前落ち着きねーんだよ」
「ああ〜お気にだったのに〜」
……
今は佐伯のテンションに救われた気がした…
けど…
そうだったー俺ら同じクラスじゃん。はぁー…
気が重いのに俺の目はリコを追う…
……ん?…あいつ何か顔赤くね?
二時間目は美術で、移動だった。
美術室に手をかけるリコの姿が目に入った。
!!あいつやっぱ具合悪いんじゃねーの?
保健室に…てちらっと聞こえたから俺は友達に美術の道具をすべて託した。
「悪い、俺、サボリな」
「あ?翔?」
俺、リコに気づかれないよう保健室まできた。
保健の先生が担任に知らせるからと慌てて保健室を飛び出していった後、そっと入り、リコに近づいた。
…リコ…
俺、リコの額にそっと手を置いた。
熱っ…
「大丈夫か?」
リコからの返事はない。
眠てんのか…
!!
リコが熱い手で俺の手を握ってきた。
「翔ちゃん…」
つぶやくような小さな声で俺を呼ぶ。
その瞬間、俺の頭の中から何もかも吹っ飛んだ。
「リコ…俺が送ってってやるよ」
「うん…」
わっっ
リコはにっこり笑う。
やべっ
俺の鼓動が早くなる…
だめだ俺、相手は病人だ、耐えろ!!
でも…キスぐらいなら…
そう思いゆっくりと顔を近づける。
俺、リコの意識がもうろうとしてるのをいいことに大胆になっていた。
「翔ちゃん…」
うあっ、あ、はい、すいません、まだ何もしてません!!
「どうして翔ちゃんって呼んじゃいけないの?」
え?
リコは昔の夢でも見てるんだろう…
俺、座り込んでリコの耳元に顔をうずめた。
「何言ってんだよ、いいよ別に、いいよ翔ちゃんで」
その答えにほっとしたのかリコは手を下ろし、眠りについてしまった。
リコ…
その時、廊下から足音が聞こえた。保健の先生が帰って来たようだったので俺は窓から外に出た。
…六年前、俺があいつの告白を受けてたら今とは状況が変わっていただろうか…少しの勇気を出せていたら…
…いや…今でさえこんな情けねーのに…でも…だめだ…あきらめらんねーよ、リコ…やっぱ俺、お前が好きだ…
俺、携帯を開きリコからきたメールを見つめ、こみ上げる涙をぐっとのみこんだ…
リコが学校を休んで三日が過ぎた。
あいつ、本当に大丈夫か?…メールでもしてみるかな…
そう思いながら家に帰り着いた。
リコん家の方から声がして、俺、身を隠してそっと覗いた。
あの男だ!!
あの男とリコの友達の、なんだっけ、同じクラスの時田とかいうやつが一緒にリコの家に入っていく。
やっぱり付き合ってんのかな…
ああ〜…俺何してんだよ…
「あんた、何してんの?」
出てきた母さんが門扉のとこで座り込んでた俺をにらみつけた。
…だよな…本当だよ…
「…ただいま〜…」
俺、そう答えて家に入った。
…バカみてー…
俺、制服のままベッドに寝ころんだ。
次の日からリコは学校に来るようになったけど、俺はやっぱり情けないままで、リコの笑顔とリコから届いたメールを見つめる日々が続いた。
そんな毎日を過ごしてるといつの間にか7月になっていた。期末テストが終わり、教室から出ていくリコの後ろ姿を見送った。
「ねー今度の花火大会みんなで行かない?」
佐伯、ぐったりする俺らにいつものテンションで言う。
「おおーいいねー中央公園であるやつだろ?いつだっけ?」
一番にのったのは斉藤だ。
「そう、7月20日にあるやつ、翔も行こうよ」
佐伯、俺の腕を掴む。
花火大会か〜…リコはやっぱりあの男と行くのかな〜…
「…そうだな…」
…今年こそリコを誘おうと思ってたんだけど…はぁー…だめだ、やっぱ誘えないよな…
「俺ちょっと便所」
なんて言って教室を出た俺、本当は廊下の窓から見える校門を眺めた。
…リコ…
そこには小さなリコの後ろ姿がある。
俺は、リコの姿が見えなくなるまで見届け、リコからのメールを見ようとズボンのポケットに手を入れた。
あれ?…あっ机の上か…
俺、急いで教室に戻った。
あれ?…確かここに…あっ
俺の携帯を握っている佐伯が目に入った。
「佐伯っそれ俺のだろ!!」
俺は、佐伯から素早く携帯を取り上げた。
「あっごめん、同じ機種だったから間違えちゃって…」
「俺帰る」
あいつ、見てないよな…
唯一保護してあるメール、リコからの、大切なメール…
なんだか恥ずかしくなって腹が立って、足早に学校を後にした。


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