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1・2・3
【初恋 恋愛小説】

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3・2・1-6

五、
今日は花火大会だ。
俺、重たい足を引きずりながら公園の待ち合わせ場所に向かった。
一時間も早い。だから誰もいないのは当たり前だけど、何だか微妙に腹が立つ。
…リコ…覚えてるかな?
俺、桜並木をぼんやり眺めて昔のことを思い出した。
まだ小学校に入る前だ。冬の寒い日に突然、リコが桜を見たいと言い出した。俺はこの中央公園を思い出し、リコを連れてきた。あいつの笑顔が見たかったから…だけど、桜が咲いているわけもなく、寒い中、ただ呆然と俺達は桜並木につっ立っていた。辺りはどんどん暗くなり、そのうち雪が降ってきて、舞い落ちる雪は、真っ白な花が一面に咲いたように見えた。
「きれー…」
そう言って桜の木を見上げるリコ…
俺はこのまま時間が止まればいいと、止まってくれと、願っていた。
あの頃からかな〜…リコを好きだって思うようになったの…
そういえばあの後、迷子になるし風邪ひくし、マジ情けないよな〜…
俺、携帯を出してリコからのメールを見つめた。
同じ高校を受けると決めたとき、受かったら告白しようとあんなに誓ったのに…あいつは今日、あの男と来るのだろうか?
そんなことを考えているうちに少しずつ人が増えてきた。
「俺、時田のことずっと好きだったんだ」
突然、後ろから聞こえてきた…告白…?
なんだよー…こんなとこで告ってんじゃねーよ…
俺、後ろをチラリと見て、体が固まった。
あの男とリコの友達の時田だ。
どういう…こと…だ…??
俺、聞き耳をたてる。
「えっ、えっちょっ…市川!?何?何で?リコちゃんは?」
市川っつーのかこの男…
「だから誤解だよ。俺、相談してたんだよ。時田のこと…」
相談…?
「…でも…」
「時田は俺のこと、どう思ってんの?」
市川は、時田をまっすぐ見つめて言った。
こいつ…リコと付き合ってんじゃねーの?何だよそれっ、けど…リコは?あいつはこの男のこと…
「翔!!早いねー」
そう言って俺の腕を掴んだのは佐伯だった。佐伯、俺の後ろにいた時田達に気がつく。
「時田さん?ええ?彼氏?」
佐伯、市川を指差した。
「あ、いや、今返事待ちなんだ」
市川、照れ笑いする。
「ええ?そうなの?やー!!ドキドキする!!」
佐伯、胸を押さえる。
…お前が告られたわけじゃねーだろ
「ちょっ、涼子ちゃんこそ、いつも北原君と一緒で、付き合ってるんでしょ?」
はぁ!?
俺、時田の言葉に驚いた。
「ええーやだ〜どうしよう、ねぇ、翔」
佐伯、俺の腕を揺する。
…佐伯と?何でそうなるんだよ…
その時、時田の携帯がなり、画面を見た時田は急いで携帯を耳にあてた。
「リコちゃん、いまどこにいるの?早くおいでよ」
え?リコ?…
「大丈夫?……あっ待って、リコちゃん話があるの………リコちゃんっ」
何?どうした?
時田、携帯をゆっくり耳から離した。
「小西さん?何だって?」
市川が言う。
「公園まで来たらしいけど、気分が悪いから帰るって…」
「そう…」
え?……あいつ…大丈夫か?…
「私、探してくる…」
「俺も行く」
駆け出そうとした時田の腕を市川が掴む。
…何で…何でお前が行くんだよ…あいつは、リコはお前が好きなんだよ…時田に告ったお前が何で行くんだよ!!
俺、もう、限界だと思った。
「俺が行く」
俺、佐伯に掴まれていた腕を振り払い、市川の前に出た。
あいつは俺が行ったってきっと喜ばないだろう…けど、こいつらの姿を見るリコは…リコの気持ちは…
「え?何で翔が行くの?翔は関係ないじゃん」
佐伯、振り払われた手でもう一度俺の腕を掴んだ。
「へ?あ、ありがとう…でも、涼子ちゃんもいるし、私達なら大丈夫だから…」
時田が驚いた様子で俺に言う。
「…あのさー、俺達付き合ってねーけど…」
「つき合っちゃおうよ、噂になってることだし」
佐伯、俺が言い終わる前に言った。
……は?……噂?なんだそれ…
「ね、翔…」
「何言ってんだよ、やだよ」
なんだよいきなり…
俺、佐伯の腕をもう一度振り払った。
「翔…私、本気だよ…」
なんなんだよ、そんなことより俺はリコんとこ行かなきゃいけねーんだよ!!
「ごめん佐伯、俺、佐伯のことはそんな風に見れない…」
「…あのメール…小西さんからだったんだ…」
?…メール?
「あっ、おまっ、やっぱ、あん時見たな」
やっぱり見られてた。佐伯が携帯を間違っていじってたときに…
うわっ…やべ、恥ずかしい…
俺の顔、赤くなってるだろうな…それがまた恥ずかしい…
「そっか…」
「あー…まぁ…そういうことだから…悪い…」
「え…翔…」
俺、三人に背を向けて南口へ走り出した。
あいつは絶対こっちから帰るはずだ…
この桜並木を通って…その通り、リコは南口にいた。
ん?…あいつらっ
俺の頭に血が上っていく。
リコが二人の男に絡まれていたからだ。俺はケンカなんか強くねーし、二人相手なんてとんでもねーけど、でも、あいつの…リコの怯える顔が目に入った瞬間、体が勝手に動いていた。
「俺の連れに何か用?」
俺、見回りの警察の姿が目に入りわざとでかい声を出した。


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