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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃〜罰…?〜-3

『失せろ』

鈴はびくっとした。
矮助のその声は、今まで聞いたこのないくらい、低く重く、殺意に満ちた声だった。

(矮助…?)
矮助を包む空気はとてもぴりぴりしていて、痛いくらいだった。

男達は後退り、あっというまにどこかに消えた。

『鈴、大丈夫か!?
どこか怪我してないか!?』

矮助は刀をしまい、鈴の方を向き、肩に手を置き、あちこち調べる。

(いつもの矮助だ…)
鈴がぼうっとしていると
『大丈夫か?』
矮助が心配そうに覗き込む。

鈴は我にかえり
『どうして…ここに…?』そう尋ねると、
『鈴が、俺の知らない男の後を追って走って行くのを見掛けたから、俺も急いで後を追い掛けたんだ。
でも途中で見失なって…
遅くなってごめん…』

鈴は驚いた。
(てっきり、あの女の子と仲良く祭りを楽しんでいるのかと…)
矮助の額には、うっすらと汗が見えた。

『怪我はないか?』
矮助の問いに、鈴がうなずくと
『良かった…』
矮助は鈴を力いっぱい抱きしめた。

矮助の広い胸。
力強い腕。
良かった、と何度も繰り返す声。

全てが心地よくて…
全てにどきどきする…

(胸が痛い…
矮助のことを考えると
矮助に触れられると
胸が…苦しい…
息が…出来ない…!)



帰り道、二人は手を繋ぎ、ゆっくりゆっくり帰った。
手を繋いで隣を歩いてる。
それだけで幸せで、言葉はいらなかった…

鈴は繋いだ手を見る。
繋いだ手から、矮助の優しさが伝わる気がした。

(矮助は優しい…
いつもいつも側にいて助けてくれる。
さっきも、矮助が来てくれて、すごく嬉しかった、ほっとした…
矮助が助けてくれて…

ん?
矮助が…助けて…?)



二人は屋敷に帰り、鈴の部屋入る。

鈴はその場にぺたんと座り、両手を畳につけがっくりと肩を落とした。

『鈴、どうした!?
大丈夫か?』
矮助は鈴の顔を覗き込む。


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