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【初恋 恋愛小説】

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翔ちゃんがいいって言った携帯を買ってはみたものの……
どうするの??
何でメール出来ないの??
そう言えば店員さんが何か言ってたけど、さっぱり覚えてない。
次の日、帰りの電車の中で説明書を開き、携帯をあれこれやってみたけど、全く分からない。
せっかく携帯買ったのに…使えない…
私何だか悲しくなってきた。
「設定?貸せよやってやる」
私の手から携帯を取り上げると、隣に腰を降ろした。
えっっっ、え!?
翔ちゃん!?
「アドレスは?」
「え?」
「アドレスなんにする?」
え?何?だっ、だめ!!何も浮かんでこない!!
「勝手に登録しとくから…」
「うん!!なっ何でもいいよ」
しばらく翔ちゃんが打つ携帯の音が響いた。もちろん、そんな大きな音じゃない。だけど、私には耳が痛いくらい響いてる。
どうしよう…何か言った方がいいのかな?
…最近、翔ちゃんと縁がある…私、翔ちゃんを…好きでいていい?……
私、そっと翔ちゃんを見た。
そんな私に気づいたのかどうなのか、翔ちゃんが口を開く。
「何で急に携帯買ったの?」
「え?」
そっ…それは、翔ちゃんが…いや、言えない…
「お父さんが…お客さんで、私と同じ年の子が男の人に連れ去られて、その人が母親にメールして助かったって、その話聴いてきて…」
私、翔ちゃんから視線をはずし、自分の靴ひもを見つめた。
「え?おじさんの店で聴いて来たってことは近くで起こったんだろ?気をつけろよ」
翔ちゃん手を止めていった。
私、思わず顔をあげた。
「私!?」
翔ちゃん、携帯に視線を戻し、言った。
「夜だと顔見えないし、制服来てたら誰でもかわいく見えるんだよ」
‘顔が見えない’‘誰でも’それって!!
私がかわいくないって言ってるみたい…分かってる…分かってるけど、好きな人に、翔ちゃんに言われると悲しくなる…
私、下唇を噛みしめた。
「うそだよ」
翔ちゃん、そう言って携帯を開いたまま私に戻した。
え?
画面を見ると登録されたばかりのアドレスが映し出されてる。 ricoricorico.s105…………
わっっ…翔ちゃんが考えてくれたアドレス……
「アドレス帳の登録の仕方とか分かる?」
「え?そんな事が出来るの?」
「出来るの、はい、練習!!」
翔ちゃん、いつの間にか自分の携帯を出してた。
あれ??うそっっ、同じ機種!!
その携帯を私に渡して、名前の入れ方、番号の入れ方、メルアドの入れ方を教えてくれた。
昔に戻ったみたい…昔、私達がまだ仲が良かったとき、翔ちゃんは私が分からない事、一つづつ教えてくれた。そして、その後翔ちゃんは必ず言う…
「はいえらいえらい、俺がっ」
登録のピーッて音が鳴ると共に翔ちゃんが言った。
うわっっ!!本当に戻ったみたい…
「降りるぞ」
いつの間にか、電車は駅に着いていて、翔ちゃんは私から自分の携帯を取り上げると、電車を降りた。
「じゃあな」
電車から私が降りたのを確認すると、翔ちゃん、背を向けて行ってしまった。
………好きでいていい?……
人混みに消えていく翔ちゃんの背中を見つめながら、なんども心の中でつぶやいた。


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