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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stormcloud-14

「わぁあああぁ!」

何かが割れる音がしたが、それがなんなのか認識するまでにかなりの時間を要した。ここは何処だ?今は何時で、一体僕は何をしているんだ?

その疑問に答えを出したのは、彼の座る椅子の傍らに膝を突いて彼の肩をさする春雲だった。

「は…ご、ごめん…」

荒い息の合間をついて、神立は言い、汗を拭った。服に手をやると、びしょ濡れになっていた。それがまた、夢の感覚を思い起こさせて鼓動が早まった。

「澱みか?」

小さな声で春雲が聞いたけれど、彼は答えなかった。神立の頑なな態度に、春雲は痺れを切らした。

「いい加減にせんか!」

じーんと、左の頬が痺れた。張り手を受けて、一瞬頭が揺れる。

「何するんだよ!」

どうしようもない混乱のはけ口を得たとばかりに、神立の瞳はギラリと燃えた。

「お前の過去に何があったか、わらわはそんな瑣末なことに興味があるわけではない!澱みの何たるかを知らねば、我が一族の存続も危ういのだ!だから秘密めかして口をつぐんだり、夜中に大声でうめいたりしてわらわを脅すのは止めろ!」

「瑣末…だって?」

心臓が心という字を有しているのは正しいと神立は思った。彼の怒りは心臓から湧き上がり、血液に乗って四肢を駆け巡った。

「わらわに話す価値も無いほどの過去であろうが?」

春雲はせせら笑った。

「お前に話す価値があるかどうかは、僕が決めることだ!ここでぬくぬくと幸せに育ったお前なんかに、僕の過去を理解されてたまるか!」

「価値はわらわが決める!」

春雲は断固として言った。

「お前はわらわに話を聞かせるために参ったのだ!ならば自分の役割を果たせ!」

「僕は!」自分の声の反響が耳を貫いた。「誰の道具でもない!!」

太鼓の響きのような血管の音が、絶え間なく耳を聾していた。言葉に殴られたような表情のまま、春雲は固まった。神立は彼女のことも、誰かに見られるかもしれないと言うことも省みずに窓から外に飛び出し、その夜は帰ってこなかった。





翌日は、颱が龍王に謁見すると同時に、龍族の間で今一度戦へ関わるかどうかの議論がなさせる重要な日だった。神立は正式に客として迎えられているわけではないため、その様子を遠くから見ることにした。ここからも、あの広間からも昨日の夜、春雲と見ていたあの水鏡が見える。広間を他の空間と仕切るのは柱と屋根だけ、なんて、青嵐会の広間とは似ても似つかない。神立は無防備極まりないと思いつつも、よくよく考えればここにたどり着くのも並大抵のことではなかったことを思い出した。それに、結局のところ彼らは龍だ。心配には及ばないと思い直して、神立は奇妙な六角形の塔の屋根の上に座って、謁見式が始まるのを待った。


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