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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stormcloud-15

式は粛々と、威厳を持って行われるであろうという神立の予想に反して、式の開始に際して、煌びやかな女たちの踊りと、晴れやかな音楽が用意されていた。

遠くであっけに取られる神立をよそに、大要を背にした壇上に座る王も王妃も、その両脇を固めるその子供たち(そうだと判ったのは、昨日の香雲が居たのと、全てが男の若者だったからであった)も一様に笑顔でその様子を眺めていた。

老齢の王は、揃った一族を見回して悦ばしげに微笑んだ。しかし、その目には覇気が無い。神立は、滑り落ちそうな王座にかろうじてしがみついているという印象を抱かずには居られなかった。

彼はふと、その中に春雲が居ないことに気づいた。そこまで家族ののけ者にされているのかと、ちょっと昨日の発言に後ろめたさを感じた神立は、踊り子の女たちが跪いた正にその奥に、春雲の姿を認めた。春雲は踊り子の格好をして、王と客に向って優雅にお辞儀をしてみせ、そして明るい音楽にのせて踊り始めた。彼女は美しい踊り子達の中でも際立って輝いているように見える。衣装もほかのもの達よりずっと美しい。



好一朵美丽的茉莉花

好一朵美丽的茉莉花

芬芳美丽满枝丫,

又香又白人人夸。

让我来将你摘下

送给别人家,

茉莉花茉莉花



モリカ、と言う言葉以外には、神立にはほとんど聞き取れなかった。春雲は髪飾りに白い花をつけ、まるで花の精のように見える。同じく白い花をつけた枝を扇のように使って、時には優しく振り、時には慎み深く口元を隠して軽やかに踊った。

幸せで、満ち足りた情景だと思った…しかし暢気なものだと言う怒りが、神立の心の中にふつふつと湧き上がってきた。

澱みなどとは関わらないのが最善なのだと思い、春雲に澱みの話を聞かせたくないと思ったのは彼だった。しかし今は、自分の醜い傷跡まで全て曝け出して、あそこで笑いさざめく龍族たちに真実を知らしめてやりたかった。

その時、優雅に顔を傾けて、神立の居るほうを向いた春雲の目を、彼は見た。彼女の目が何も見ていないのを。まるで人形のように、暗い思念の深遠を覗き込むようなあの目が。

「人形…」





春雲は、服を脱がせるのに手間取る小姓を叱り飛ばして、大急ぎで広間に戻った。春雲の踊りが終ると、彼女が戻ってくるのを待たずに、謁見は開始される。もう30分も過ぎたろうか。忌々しい茉莉花が髪に絡まったせいで、初めから髪を結わなくてはならなかった。何が“私の好きな茉莉花”だ。次にあのムカツク匂いをかぐことがあったら、全ての花をもぎ取ってやる、と春雲は憤慨した。しかし、広間に到着した時に、すでに狗族の奏上が終っていた時には、茉莉花の“木を根元から燃やしてくれる”、に訂正された。


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