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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stormcloud-13

―春雲、春雲や…

「哥さま!」

「お前は解るね?このままでは龍が滅びを迎えてしまうことを」

幼い春雲は、穏やかな哥のその言葉に、いつも怯えたものだった。

「いつ滅びてしまうの?明日?それとも来月?」

涙を浮かべた春雲の頭を撫でて、哥は幼い妹を膝の上に乗せた。

「いいや。私やおまえがしっかり勉強して、龍のために力を尽くせばきっと大丈夫だよ、春雲」

「本当?」

「本当さ。だから春雲、私の言うことをよくお聞き」

従順に頷いた春雲は、それからずっと哥を師と仰ぎ、哥の言うことこそが真実なのだと思って過ごしてきた。龍の滅びと、それに対する恐怖はいつでも春雲の心にあり、その恐怖が増すごとに、哥には尊敬の念を抱くのであった。

寒雲の弟であった莫雲は、官吏からの覚えがめでたかった。香雲は贈収賄の気配を嗅ぎ取り、春雲を通じてその汚職を暴いた。彼は自らを次の王に推し立てようと、役人はおろか兄弟にまで金をばら撒いていたのだ。もちろん、その件で春雲が活躍したことは秘密にされている。かわいい阿春の仮面は、哥がしつらえたものに他ならなかった。春雲は、最初の頃こそスリルを感じていたものの、今はその仮面と本当の自分の間とのギャップをもどかしく感じてもいた。

今、哥はかつて二人で弟の汚職を暴いたように、その哥の裏切りを暴こうとしていた。春雲は、哥の助けになるならばと、こうして地上から狗族を招いて話を聞こうともしていた。これは、哥がよく瀛と話し込んでいるのを真似しただけだった。哥は、瀛と話す時には絶対春雲を同席させなかった。それ故に好奇心が掻きたてられたということもある。とにかくこれは、哥には断りなく行ったことだった。いつか話そうとは思うが、哥は自分に相談なくそんなことをすることを怒るだろう。まだ言い出せないが、きっと何か哥の助けになれるような事実を発見したら、きっと…

しかし、最近は、哥の考えていることが読めない。哥の中での善と悪は、春雲にとっては酷くあいまいな境界線で隔てられているように思えた。糸のように細く、柔軟でか弱い境界線によって。





七番…七番よ…

神立と、過去の亡霊が二人っきりで、狭くて汚い、ベッドの上に居る。

そうか、僕はもと居た場所に戻ったのかと、神立は冷静に思った。自分の居るべき場所、自分の魂に見合う場所に在るのだと。

澱み…擾が彼の上にのしかかり膝で肺を圧迫している。そいつは嬉々として神立の顔を覗き込み、頭上に掲げた何かから、二人の身体に液体を浴びせかける。

…口を開けろ。

「いや…だ…」

鼻を塞がれ、仕方なく開けた口に何かが侵入した、息がつまって、仕方なくの見下すと、あとから生暖かい感覚と鉄臭い味が下を焼いた。顔を背けると、血みどろの顔が並ぶ。彼らは何も言いはしなかった。口を開かず、少し身体を斜めに傾けたままじっとこちらを見ているだけだ。彼らの瞳に篭った恨みが、静寂と共に神立の骨髄まで染み渡るのを待っているように…。

擾は上に掲げていたものを放り投げた。胸の悪くなるぐしゃっと言う音がして、それは床をはねたりもしなかった。物憂げにゴロゴロと回転し、焦らすように神立の目を、捉えた。

生首の目が。


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