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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-38

「ほう?」

「んんんんんん……!」

首を、床から引き剥がす。体中にものすごい水圧を受けているようだ。肩まで浮いた時、男が中谷の胎に踵を打ちつけた。

「ぐっ!」

中谷の絶望をよそに、男は話し続けた。

「お前如きが私に指の一本でも触れられると思うか?え?お前も、清潔そうな顔をして、もうあの男と寝たのだろう?まるで抱いてやることが己の使命であるかのような薄ら寒い同情心を持って、あのかわいそうな犬を抱いてやったんだろう!虫唾が走るわ!」

一音節ごとに、平手打ちが来る。手加減を知らないその手と、胎に乗ったままの足が彼女をなぶった。

「おまえには―」

中谷は、片腕をついて身体を起こし、男の顔を見据えた。

「生死を冒涜するお前には分からない…愛することを知っている人間の心が!」

「愛、だと?凡庸で、陳腐な言葉だ。そんなものは何の役にも立たん!」

明らかに嘲笑の篭った声だったが、その男自信、愛という単語が耳慣れないものであるようにぎこちなく語った。

「それでも…愛は、愛は誰かを救うことが出来る!」

男は、かさぶただらけの顔を覆って嗤った。

「そしてお前は飆を救ったと?!傲慢だ!それこそ女の考えそうなことだ!人間を救うのは神だ!女ではない!」

神。その言葉をこの男から聞くとは思わなかった。中谷は、男の狂気が一秒ごとに増してゆくのを、何故か冷静に眺めていた。

「神は私を認めてくれた…病に打ち勝ち、寿命を超越し、戦火を潜り抜けた私を、あのお方は認めてくださった…!」

―あのお方…?この男には神が見えているというの?

「…しかしどうだ!神は私を求めていたのだ!私を傍らに望んでくださった!世界を作り変えるために!」



「傍らに…?」



風が、吹いた。



「…今はお姿が見えないようだな」



「お前―?」

「飆…!」


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