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七夕には愛を囁いて
【幼馴染 官能小説】

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七夕には愛を囁いて-2

「皆気を使うだろ。話があるなら家で聞いてやる。もう1時間以上は経過してるんだ、諦めて帰れ」
「1時間半。よっちゃんが今ここで話を聞いてくれない限り居続けますから」
お弁当を食べるよっちゃんの対面であたしはと言うと、カウンターに置かれた色とりどりの短冊に本日三枚目の「よっちゃんが話を聞いてくれますように」と記して書いては結んでを繰り返している。
もうすぐ旧暦の七夕だ。役場に飾られた笹も重くしなり、風に吹かれて涼やかに葉を鳴らしている。
あたしの書いた短冊、赤・ピンク・黄が綺麗に揺れている。
「じゃあ聞いてやる。今すぐ喋れ。5分以内な」
コンビニ弁当を掻き込みながらよっちゃんが面倒臭そうに言う。その態度が問題だ。話を聞くにも態度ってあるでしょ。
「嫌。そんなお弁当食べながらとか嫌。5分とか無理」
「お前、人が飯食う時間に居座っててそういう口を利くのか」
ぐびり、とお茶を飲み、近づいて来たお婆さんに愛想よく笑う。
「こんにちは。暑いですね」
「ホントにねぇ。あのねぇ、ご飯中に悪いんだけど住民票を貰いたいのよねぇ」
お弁当なんか脇に押しやって、本当に愛想よく対応してる。この用紙のここと、ここと、って解りやすく目印を付けて。男で気が利く市民係って言うのも珍しい。
ぼけぇっと見つめ続けると、眉間に皺を深く刻んだよっちゃんが目の前でデコピンの仕草をする。
「…な……?」
「ぼうっとしてんな。仕事の邪魔だ。家でしたくない話なら六時に俺の家に来い。どっかで飯でも食いながら話せばいいだろ」
眉間に皺を寄せ、半ば投げやりにまくし立てられ唖然とする。だって、今のって、つまり、所謂……おでーと?
「よっちゃ…」
「はい、では五百円になります。……ありがとうございました。はい、戸籍謄本ですか?でしたら、こちらの用紙のですね…」
よっちゃんのお弁当、完璧に冷えてる。まだ三分の一は手付かずで。だけど嫌な顔一つせず、昼休みを利用して足を運ぶ人達に笑顔を向ける。
だけど、あたしには物凄い不機嫌顔で悪態をつく。だけど甘い。
素っ気ないようで考えてくれる。知らん顔であたしを嬉しくさせる。ああ、もう……
「よっちゃん大好きっ」
満面の笑みであたしは役場を後にした。後ろ背でクスクス笑う声が聞こえる。だけど気にしない。
だって。
でーとだもんっ





よっちゃんの家に着く頃に雨が降り始めた。ぽつりぽつり、が何時しかザァザァと降り重なって雨脚が強まっている。
そんな中、よっちゃん宅で寛ごう……って思ってたのは去年までの話。クリスマス以来、恥ずかしくてよっちゃんママとかに会えないのだ。
だから、よっちゃんに、着いたよ、ってメールしてぼんやりと車庫で待っていた。
一階が車庫の三階建て。よっちゃんの愛車、この春に買い替えた四輪駆動のコンパクトカーが停められている。加えてパパさんの軽自動車も。家に帰って来てるのは間違いない、はず。
あーあ。織り姫達は雨雲の向こうでラブラブデートしてるんだろうな。甘くって蕩けちゃいそうな。

「おい、いい加減気付けよな」

……!?
いきなり聞こえたよっちゃんの声。驚いて辺りを伺うと、既によっちゃんは運転席で煙草をふかしているではないか。
「よっちゃん、居るなら声かけなさいよ。愚図ねぇ」
言いながら助手席に乗り込み、少し安心する。早く二人きりで会いたい、そう思ってたから。


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