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きみおもふ。
【純愛 恋愛小説】

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きみおもふ。-6

ガタン!ドタ!
バタバタバタバタ…

今まで静まり返っていた家の中が突然騒々しくなった。
次の瞬間階段から、正面の扉から、玄関脇の扉から同時に人間が現われる。
「あらー、やだ逸!お客様連れてくるなら連絡くれなきゃ」
ニコニコと母親が言う。この明るさ、昔から変わってないなと友夏は思う。
「ほほー彼女かえ?なかなかやるの、お前も」
祖父が歯の足りぬ口を綻ばせて告げた。続いて姉も口を開く。
「へぇー可愛いじゃん。あんた女のセンスはあるんだね、驚いたよ」
えっ、えっ、と困ったように三人を見る友夏。
「あ、あの、私…」
困り果てた友夏を見て逸は「はぁ」と溜め息をつく。

「おかんも姉キもじーちゃんも惚けたのかよ。友夏だよ、イトコの」

刹那の間。その後家が震えるくらいの大声が上がる。
「ええええ!?」
友夏は苦笑を浮かべたまま軽く会釈した。
「友夏ちゃん!?朝森の?あらぁ可愛くなって!叔母さん全然分からなかったわ」
「やー友夏だったの!でっかくなったな、何時ぶり?」
「ほー友夏ちゃんが逸の彼女なんかの、そりゃあめでたいの」
「んなわけねーじゃん、この惚けじじい!第一友夏が逸なんか相手にするわけねぇだろ」

そんな会話を背に、逸は階段を登り部屋へ向かう。
『いつくん』と子供の字で書かれたプレートのかかった部屋へ体を滑り込ませ、深い溜め息を吐いた。
ふと、祖父の声が蘇る。

『ほー友夏ちゃんが逸の彼女なんかの、そりゃあめでたいの』

全体重をベッドへ投げ出す逸。苦しそうに、もう一度溜め息を吐く。
「ゆか……が…彼女か…」
呟いただけで込み上げるものがあり、己を誤魔化すように額にかかる髪を掻き上げた。

『んなわけねーじゃん、この惚けじじい!第一友夏が逸なんか相手にするわけねぇだろ』

ずきん。痛み。胸に走る。
「分かってるよ……」
擦れた声。唇を噛む。
「そんなの、俺が一番よく分かってる」
悔しそうに呟くと、逸は勉強机に手を伸ばし写真立てをとった。
映っているのはまだ幼い少年少女。寄り添って、一面に広がるクローバー畑の中で笑っている。
「ゆか……ごめん、分かっていても諦められないんだ…忘れられないんだよ」


私服に着替えてダイニングへ行くと、友夏が御馳走の並んだテーブルを前にちょこんと座っていた。


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