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きみおもふ。
【純愛 恋愛小説】

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きみおもふ。-11

ふと目が覚める。カーテンの隙間から優しい朝の光が入り込んでいた。
「ん〜〜…」
伸びながら体を起こす友夏。見覚えのない景色が目の前に広がっている。
「ん?」
首を傾げ、友夏はひたすら頭を捻った。
(確か逸くんちに泊まったんだよね?でもここ、藍さんの部屋じゃないし…)
とりあえず立ち上がり、キョロキョロ辺りを見渡す。
壁にかかっている見覚えのある制服。本棚に並ぶ難易度高の問題集。
「逸くんの、部屋……?」
そういえばと記憶を辿る。
(私、昨日リビングで……しかも逸くんの上で寝ちゃったんだ。だから逸くんがここに私を)
次第に申し訳ない気持ちに捕われる。
(ああ、なんてことしたんだろう。逸くん怒ってるだろうな…)
肩を落とすと同時に視線を下げた時だった。キラ、と何かが朝日を弾いた。目を細めて机へと手を伸ばす。
それは、写真立てだった。カバーガラスに光が当たっていたのである。
逆光で中の写真がよく見えず、くるりと方向を変えた。

「……あ…」

そこに写る二人。友夏の表情が微笑みへと変わった。
「私と逸くんだ…」
胸が温かくなる。友夏は嬉しくてたまらなかった。
高校一年のあの一件以来、逸は自分を嫌っていると思っていた。でも写真が飾られているところを見ると、そうではないのかもしれないと思えたのである。
「早く逸くんに会って昨日のこと謝ろう」
写真立てを置くと、友夏は足取り軽く逸の部屋を抜け出した。

「―――!」

スキップを踏んでいた足が止まる。廊下に出た瞬間、下から言い争うような声がしたからだ。
友夏は藍の部屋で着替えをすることも忘れ、慌てて階段へ足を伸ばした。


「もう、全くあんたは!前にもソファーで寝るなって注意したじゃないの。今日なんかは電気点けっぱなしだったし!」
逸はキーキー怒る母を前に頭を掻きながら突っ立っていた。
「大体ね、下で勉強することが間違ってるのよ。自分の部屋ですればいいのに」
「だから悪かったって…」
げんなりしながら数度目の謝罪をした時だった。
逸の目の前に一つの背中が現れた。彼をかばうようにして両手を横へ伸ばしている。

「違うの叔母さん、逸くんは悪くないの」

逸も逸母も驚いて口をつぐんだ。泣きそうな友夏の声だけが響いている。
「私が悪いんです。リビングで寝ちゃった私を逸くんが自分のベッドまで運んでくれたんです。だから自分はソファーで寝てくれたんだと思う。だからお願い、逸くんを責めないで下さい」
沈黙。友夏は必死に逸母を見つめている。
「あら、そうだったの」
先程の様子からは信じられない程輝かしい笑顔を浮かべる逸母。


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