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記憶の片隅に
【純愛 恋愛小説】

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記憶の片隅に-3

何なんだろう…。あたしは考えながら家路を歩いた。あたしの家は高校から歩いて数分の所にある。だから朝も8時に起きても間に合うというわけ。ちなみにあたしは高校二年生だ。
ふらり、ふらりと歩いていると、前にも同様に歩く人がいた。今日は早いな、あれはお姉ちゃんだ。彼氏のとこには今日は行かないのかな。
「郁ねぇっ」
お姉ちゃんに聞いてみようと、走って傍に寄った。
「質問なんだけどさ…」
と見上げたあたしは言葉を失った。泣いてる…
「ごめんね、早弥。後で聞くね…」
お姉ちゃんは走り去った。彼氏と喧嘩しちゃったのかな…。早くお姉ちゃんが元気になりますように…
あたしは天に願った。

結局お姉ちゃんに聞けないまま、夜を迎えた。あたしはベッドに転がって、白風くんのことを考えていた。何を忘れてるんだろう…あたし…。彼との事といい、夢の続きといい、思い出せないことばかりだ。あたしって馬鹿?苦笑していたあたしはハッと気がつく。
思い出せない夢は、幼い頃の鞠つきの続き。さっき白風くんからもらったのは…鞠…。…まてよ…?鞠つきの場所って神社よね?もしかして、今日のあの神社?夢と彼は関係してるのかも…。
あたしは勢いよく布団を被って部屋の電気を消した。こうなったら寝てあの夢を見よう。それで全てを思い出そう…。

てんてんてまり…
あの歌だ…。鞠をついているのはあたしだけど、何故か客観的に考えることができた。空を暗闇が包んで行く。あたしは鞠をつけ続ける。
…てんてん…
歌が2順目になる。夢が進んだ…。
突然吹く突風。
「きゃ…」
幼いあたしは鞠をつく手を止め、目を閉じる。その間に鞠はてんてんと転がっていく。
「あ…」
目を開けたあたしはそれを追い掛ける…

ふと目が覚めてしまった。まるで決められていたようにパッチリと。あたしは軽い溜め息をつく。でも夢が少し進んだし、今日はよしとしよう。
そしてまた眠りへと落ちていった。


彼はいつも通りだった。あたしは彼に注意を注ぎながら、周囲からはばれないように自然に振る舞う。
白風くんの目的って何だろう…。それが分からないから一層慎重になるのだ。あたしに何かを思い出させて脅す気なのかしら…。

今日の体育はフォークダンス。十月の学園祭で、全校で踊るために練習するのだ。曲は定番のオグラホマミキサー。二人で寄り添って踊り、リズムよく次の男女と交代する。
「はい、そこで軽やかにステップ!男子、もっと楽しそうに!」
体育教師もめちゃくちゃなことを言うもんだと思う。女子のあたしだって楽しくないって…。
「お、やってるな」
現れたのは麻生先生。長袖のYシャツを腕まくりして言う。
「どれ、俺もいっちょ踊るかな」
「きゃー、先生やろやろっ」
「踊れんのかよ〜」
女子の黄色い声、男子の歓声があがる。そして先生が割り込んだ先は…叶実が相手だった。すぐに交代するとはいえ、不服そうに踊る叶実。あたしはその姿に苦笑した。が。
あたしも笑っている場合ではなかった。次のターンで相手が変わる。白風くんに…。
―ターン…
あたしは体を強張らせる。
―パートナーチェンジ
触れる手。しなやかな指。彼には全く緊張した様子は無い。
「どうしたの、そんな堅くなって」
笑いを含んだ声がする。あたしは唇を噛む。
「今日の早弥の視線は恐いなぁ〜」
…ばれてたの…?気付かれないように、目が合わないようにうまく見ていたはずなのに…。
「目的は何?」
次のターンが近付く。彼は答えない。
「ゆっくりだけど思い出すから…約束するから、だから…」
ターン。あたし達は向かい合う。
「他の人に手を出さないで。苦しめないで」
繋いだ手を掲げ、お辞儀をする。これが終われば相手が変わる。
「お前次第だな…」
お辞儀の瞬間に聞こえた言葉。これは責任重大だ!早く思い出さなくちゃ、みんなを守れない…
あたしはぐっと唇を結んで次の人の手をとった。

ところが、だった。次の夜も、その次の夜も夢は進まなかった。力み過ぎたのかなと、目覚めたあたしは窓から空を眺める。綺麗な三日月があたしを見下ろしていた。

日が立つにつれ、白風くんの人気は高まっていった。休み時間には他のクラスからも女の子が覗きにくる。みんな騙されてる!あの人は狐なんだよ!?
みんなに叫びたい気分。
帰宅時なんてもう人だかりができる。女子はデートのお誘い、男子は部活の勧誘で。
あたしはそんな彼を尻目に教室を出る。神社に行くんだ。あそこにいれば、何か思い出すかもって思って


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