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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-2

ニ 衝突



 高校三年というものは非常に面倒くさい。何故なら、進路や試験のことで否が応でも担任と対話しなくてはならないからだ。俺はそれが嫌で仕方がなかった。

 俺の担任はというと、よくドジをしていた。計算を間違えたり、教科書を忘れたり、次に自分が何を言うか忘れたり。

 しかし、こいつの授業はわかりやすいという利点もちゃんとあった。俺が今まで体験した中では、一番楽で、わかりやすい方法をこいつは授業で行った。それを「昔、ある人に教わったんです」と照れて言うので、誰かが「先生の恋人?」とふざけて言っていた。それはどうやら図星らしく、それを言われたあいつは、顔を真っ赤にして「ち、違います!」とわかりやすい否定をしていた。



 そんなある日。いつもの帰りのホームルームにて、俺は呼び出されることになった。



「田原《たはら》君は……あとで生徒指導室に来てくださいね」



 あぁ……と心の中で嘆く。



「何でですか?」



 一応聞いてみたのだが、そいつは満面の笑みで「お説教です」などと抜かしやがった。

 いや、本気で勘弁して欲しい。

 掃除が終わった後、俺は生徒指導室へと連れてこられた。席に座ると、そいつも座り、何やら資料を眺め始めた。



「『田原 義一《たはら よしかず》』、十七歳、誕生日は二月十七日。早生まれなんですね。へぇ……ご家族の方とは、高校が遠いため別居中。今は一人暮らしですか。凄い……成績は常に学年十位以内に入ってるじゃないですか」



 とにかく、その資料には俺の個人情報が満載のようだ。



「あ、そうでした。田原君だけ、まだ進路希望の紙が提出されていないんですよ」

「明日出すから勘弁してくれませんか? 今日は疲れているから早く帰りたいんですけど」

「いけません。今日中に書いてください」



 そして、紙を手渡される。進路希望とは言っても、将来なりたいものを書くようなものだ。俺は適当に書く。



「第一『総理大臣』、第二『俳優』、第三『ニート』……第一以外は適当ですねぇ……」



 いや、第一も適当だけどな。


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