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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第十章』-5

「ほら秋冬、横になって横に」
「はぁ?横になったら勉強が…」
と言いつつも横になる。
すると、姉貴はオレに重なるように横になった。
「ちょっ!アホ!!」
「いいじゃん。こっちのほうが楽だし、あんたにサービスしてるのは私のほうだし」
あ、じゃあなに。
勉強を教えてもらっているお礼に、こうやって一緒に横に…
って馬鹿か?
「発想がおかしい」
「まぁいいからっ。とりあえずこの問題ね」
そう言いながらノートを開く。簡単な数学の問題。
「…むしろなんでわからねぇの?これはこのx^2の式をyに代入してだなぁ」
「代入?なにそれ」
「よく高校受かったな」
千里が笑った。
「春夏ちゃんってどうやってこの学校入ったの?」
「なにって…スポーツ推薦全部蹴って、残ったのが滑り止めのこの学校だけだったのよ」
オレと千里は、心の底から驚いた。
「な…スポーツ推薦って…姉貴なにかしてたっけ…?」
「陸上。私よろず部入る前は陸上部よ?」
千里はパソコンを動かし始めた。
「あ、すごいこれ。中学三年生のときに、短距離で県内新記録出してる。高校入学直後の部活動で、非公式だけど県内の高校生記録を0.5秒上回ってる」
「ここのグラウンドは地面悪いから、もうちょっと早く走れるかものぅ」
「天才だよ。春夏ちゃん、これは…」
すごいな。そんなすごかったのか。
でも、勿体なくないか?そんな才能を、気まぐれで潰して…。
ていうか、なぜ…、
「なんで陸上やめたんだよ」
姉貴は言う。
「飽きた。それに、秋冬が心配だったし」
どんな表情で、それを言ったんだろう。オレからは見えない。
「なるほど、似てるよ。秋冬君は頭脳において天才、春夏ちゃんは運動において天才。すごい姉弟だなぁ…」
「オレが天才?馬鹿な、オレは普通だよ」
千里が微笑む。
「東大レベル軽く超える学力持っておいてよく言うよ」
「もうそんなことはどーでもいーからさー。この問題早く教えてよ」
オレは笑ってしまった。
「はいはい」
それから、おとなしく姉貴と勉強をする。
まぁ一方的に聞かされているだけな気もするが、悪くない。
時折、千里の歌声が聞こえてきたりして、かなりのんびりとした放課後を過ごし、
気付けば、外は真っ暗だった。
「そろそろ帰ろうか」
オレが姉貴に言った。
姉貴は外を見ると、急に立ち上がった。
「雪だ…」
「え?」
三人で窓に近付き、開けた。
「ほんとだ。よく気付いたな」
「雪の音がね、聞こえたんだ」
「音?」
「信じる?」
オレは少し考えて、頷いた。
「もう六時か、そりゃ暗いはずだよ。姉貴、帰ろう」
「そだねー」
オレ達は帰る支度を終わらせ、部室を出た。
「じゃあ僕、柚木さんと帰るから」
「あぁ、じゃあな」
千里と別れて、姉貴と一緒に学校を出た。
「寒いなぁ」
姉貴が呟いた。
確かに寒い。少し風も強くなってきた。
「秋冬、手ぇ出して」
「あ?あぁ…」
ポケットに突っ込んでいた手を出すと、姉貴はそれに自分の指を絡めた。


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