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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第十章』-4

「久しぶりだよね」
姉貴が言った。
「三年ぶりか。母さんも喜ぶだろうな」
あの二人は、大恋愛の末に結婚したらしい。なんでも、元モデルの母さん(いまだに信じられない)と付き合うのは、一介の会社員だった親父には大変だったようだ。
その親父も、昔オレに
『オレは昔めちゃくちゃモテてなぁ。高校時代に告白してきた女は何十人とだなぁ』
とか言ってた。
まぁ結局、結婚を決めた直後に妊娠が発覚して、それが母さんの両親に挨拶する前っていうんだから、反対も凄かったらしい。
二人曰く『なんか気付かないうちにできちゃってました結婚』だと。
突っ込みどころが多すぎる。何から処理すればいいんだ。
そんな二人が結婚した直後に単身赴任ってんだから、尚更運が無い。
「なぁ姉貴、帰りになんか親父に買って帰るか?」
階段の上から姉貴が言った。
「え?別にいいでしょ。ろくな父親じゃないし?」
そして姉貴は微笑んだ。
ほんと、なんでこんな可愛いっつーか、綺麗っつーか。
「顔赤いぞ〜」
姉貴の言葉に動揺して手が滑り、机と椅子が踊り場まで派手な音をたてて転がった。
「やっちまった…」
「大丈夫?」
「あぁ、別にどっかに当たったわけじゃないしな」
とりあえず踊り場まで降りて、持ち直す。滑らないように、しっかりと。
「なんで顔赤かったの?」
姉貴が聞いてきた。
「…うるせ」
言えるわけがない。恥ずかしいからな。





机の運搬も終わり、一段落ついた。
「ところで、なんでソファが入るんだ?」
「校長室のソファを新調するらしくてさ。校長に冗談で『古いのください』って言ったら、二つ返事でいいですよって」
なるほど、よくそんな事校長に言えたな。
「やっぱり捨てるの勿体ないしね」
そりゃそうだ。
「もうすぐ業者の人が古いのをこっちに持ってくるから」
へぇ、じゃああれだ。もし二人ともソファなんかいらないって言ったら、こいつはどうするつもりだったのかねぇ?
そんな事を思っている間に、業者の人がやってきて、ソファを置いて帰っていった。
ソファは長めの二人掛けと、シングルのソファだ。
それが二つづつ。えらく場所をとるな。
「ふっかふかー」
千里がそう言いながら、シングルソファにばふっと座った。いい感じで体が沈んでるな。
オレは二人掛けソファに横になった。
「あぁ、これは寝れる。今度からここでメシ食おうかな」
「それいいねぇ。教室からもある程度近いし」
「そん時は私もちゃんと誘いなさいよね」
姉貴がオレの足元に座った。
「姉貴、そっちのソファに行けよ」
「いいじゃん別に」
「…あぁそうだな」
オレは別のソファに移動しようとした。姉貴に服を掴まれる。
「なんだよ」
「ここでいいじゃん」
なんでこんなに自分勝手なのかな。
「狭いのが嫌なんだよ」
「勉強教えてほしいのよ」
そういえば、姉貴は明日補習だったな。
「しょうがねぇな」
ソファに座る。姉貴が立ち上がり、机の上のカバンに向かう。
千里は、さっき買ったらしい缶コーヒーを飲みながら本を読んでいる。


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