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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第十章』-1

普通の恋って、なんだろう。
オレは姉貴を好きになってしまったときから、普通を失ってしまった。
だから、普通の恋を知らない。




シスコン『第十章』




「姉貴…あのさ…」
目の前にいる最愛の人。
いつもオレを見てくれた、大切な人。
「どうしたのよ」
心配そうな顔をしてくれる。その優しさに苛立ったときもあった。
今は、純粋に感謝してるんだ。
「オレ、姉貴のこと、愛してるんだ」
姉貴は別に驚かない。そして何も言わない。
「見返りが欲しいわけじゃない。何かを願うつもりもない。ただ…知っていてほしいんだ。オレが、姉貴を一番大事に想っているってことを」
姉貴は微笑んだ。
「そ、わかった。私も秋冬のこと一番大事に想ってるから」
そう言うと、姉貴はテレビを見始める。
「隣…座っていいか?」
「いいよ」
隣に座る。
「手…繋いでいいか?」
「いいよ」
手の平をあわせ、指を絡めた。
あぁ…、もう止まらないんだな。この想いは。ほら、どんどん欲しくなる。
「キスして…いいか?」
姉貴が笑った。
「な…なんだよ…」
顔がほてる。
「私のこと、春夏って呼べるならいいよ」
え…。
「できない?」
姉貴は笑っている。
春夏って呼ぶのは、何年ぶりだろうか。
「…家の中だけでいいかな…?」
「しょうがないなぁ。いいよ」
腰を浮かせ、姉貴の顔に近付く。
そして、キスをした。
「…あぁ恥ずい」
手を離し、立ち上がった。
「寝る」
逃げるように部屋に入った。
オレは馬鹿か?なに調子乗ってんだよ。
春夏だなんて、呼べるかよ。
姉貴と距離をとるために、姉弟だって自分に言い聞かせるために、姉貴って呼んでたのに。
また、距離縮めちまう。無意識に、無抵抗なままに。
「なんで好きになっちまったんだよ…」
今更過ぎる自問。答えは出てるのに。何度も答えたのに。
誰よりも近いから。
遺伝子レベルで近い、同じオレと姉貴。オレが姉貴を好きになったのは、多分必然だ。
でも、許されない。オレと姉貴は姉弟だ。オレが望む未来は、
姉貴の望む未来じゃない…!


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