投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

シスコン
【コメディ 恋愛小説】

シスコンの最初へ シスコン 61 シスコン 63 シスコンの最後へ

シスコン『第九章』-9

「もう、諦める。」
優魅が言った。体育館の隅に、三人が座っている。
「あの二人の間には、入れないんだなぁ…。」
優魅が天井を見た。
「…オレ、余計な事…しちまったな。」
澄が辛そうに言った。優魅は首を振る。
「いずれ、こうなってた気がする。」
梓はボールを持った。それを、澄に向かって思い切り投げた。
「うぉっ!?」
「スリーポイント、見せてよ。」
「…入らねぇよ急には。」
澄は立ち上がり、ライン手前に立って、ボールを投げた。
ボールはリングの中を通った。
「入ったな。」
澄は苦笑いした。
「帰ろっか。」
優魅が立ち上がる。
「明日からも、頑張りますか。」
澄が言いながらあくびをした。ボールは、体育館に何個も転がったままだ。
澄は体育館から一歩出た。
「お疲れ。」
千里が出入口のすぐそばに座っていた。
「なんだ。いたのか、千里ちゃん。」
「まぁね。」
「なんで入んなかったんだ?」
千里は立ち上がった。
「…入っちゃダメな気がした。」
「そうかい。」
二人は並んで歩く。
「…あのさ。」
「ん?」
「秋冬君…大丈夫かなぁ?」
澄は笑った。
「あいつは、強いから大丈夫だよ。」





秋冬は家の鍵を出した。寒さからか、手が小刻みに震え、うまく鍵穴にさせない。
「ちく…しょっ!」
何を言おうか、どんな顔で話そうか、なにも考えていない。
だけど、春夏に何かを伝えたい。今の秋冬にはそれしかなかった。
鍵をさし、半回転させた。ドアノブを回し、家の中に入った。
秋冬は靴を脱ぎ、リビングに入った。
「姉貴!」
「わっ!!!」
春夏は大声で呼ばれた事に驚いた。
「なによ!」
春夏はまた驚いた。秋冬が、何か思い詰めた顔をしていたから。
「姉貴…、」
春夏の顔を見て、色々な感情が沸き上がってくる。秋冬は悟った。
もう嘘をついて逃げても無駄なんだ、と。
「…秋冬?」
期待などしていない。伝わるとは到底思えない。それでも、明確にしなければいけない思いがある。
自分は、春夏を一番に思っていて、それは揺るがないということ。
春夏を、愛しているということ。
「姉貴…あのさ、」
秋冬にとって春夏は、世界で一番大切な存在なのだから。





続く


シスコンの最初へ シスコン 61 シスコン 63 シスコンの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前